鄭氏によると、臨床実習生として遼寧省の瀋陽軍区総医院(現北部戦区総医院)に勤務していた1994年、上司に「秘密軍事任務」への参加を命じられた。当時18歳に満たない兵士から臓器を摘出し、軍高官に移植する手術だったという。 

 手術は臓器摘出のために改造された車両の中で行われた。手足を縛られた若い兵士が軍の監獄から車内に運ばれ、麻酔を使わないまま左右の腎臓が摘出された。鄭氏は眼球を取り出すよう命じられたが、恐怖で何もできず、別の医師が行ったという。鄭氏は「兵士の目はまだ動いており、私をじっと見ていた」と言葉を詰まらせながら振り返った。 

 中国当局の「臓器狩り」疑惑を巡っては、当局が邪教とみなす気功集団「法輪功」の信者が対象になっていると指摘されてきた。鄭氏は2005年、家族と親しかった中国共産党政治局員の側近から「湖北省武漢にある省公安局の地下には法輪功の信者がぎっしりと収容され、未成年者も含まれている」と聞いたという。 

こうした状況に衝撃を受けた鄭氏は同年出国し、カナダ政府に保護された。