子供の頃に、大人が思わず眉をひそめたくなるような代物に夢中になったりした経験はないだろうか。

 好奇心が先走りがちな子供たちはときにとんでもないものに熱中するものだが、近ごろ台湾や香港で大きな話題になっているのが、中国本土の小中学生の間で大流行しているという「臭い水」作りだ。

 ありとあらゆる「臭い」材料をペットボトルに放り込み、さらに熟成を重ねるという、もはや劇薬としか呼びようのない液体を作っているらしいのだが、これが発酵すると爆発するため、あちこちで被害も出ているようだ。

小中学生の間で「限界を超える臭い水」作りが流行

 現在中国の小学生・中学生の間で流行しているというこの「臭い水」。彼らはネット上にある「レシピ」を拾ってきては、「いかに人より臭い水を作るか」を競っているという。

 ボトルに貼られた「レシピ」のラベル。子供たちはネットでこういった原材料のリストを手に入れては、さらにオリジナルな改良を加え、より強烈な「臭い水」作りに夢中になっているのだ。
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 そんな彼らにとっての原料は、ありとあらゆる「臭い」モノ。報道によると、材料として使われたのは牛乳や生の豚肉、ゴキブリ、蠅、ハンドクリーム。

 さらにネズミの尻尾や蚊、唾液、賞味期限の切れた液体類なども使われているとのこと。中にはもっとおぞましいモノを入れてみた生徒もいたみたいだ。

 こうして、「レシピ」通りにペットボトルに詰められた「臭い水」は、さらに熟成され発酵し、恐ろしい毒薬を作り出す。
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発酵したボトルが爆発し生物兵器と化す

 そう、これはもう紛れもなく毒薬だと言ってもいいだろう。既に中国国内のある教室では、授業中に生徒が持っていたボトルが爆発するという事件が起こっている。  報道によると、凶器となった液体は、5年生の生徒3人が作ったものだという。1人がSNSで見つけたレシピをもとに、残りの2人を説得して調合したものらしい。
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 レシピにはボトルを数日間直射日光に当てるよう書かれていた。レシピに忠実に作られた液体は、当然日光の熱で発酵が進む。

 いい感じに熟成された液体を、件の生徒が同級生に見せびらかそうとした際、発酵によって溜まったガスのせいでボトルが破裂したものとみられる。

 現場となった教室全体に悪臭が充満。少なくとも12人が嘔吐し、教室にあったコンピューターが悪臭がする液体まみれになり、教室は数日間使用不能になったそうだ。ここまでくるとほぼテロである。

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冗談や遊びでは済まないレベルの危険性

 北京友安病院感染症科主任医師の李侗曾氏は、この「臭い水」について以下のように語っている。
レシピは作った人によってそれぞれ違うため、できあがった調合物がどの程度有毒であるかを推定するのは難しいでしょう
 生徒たちによって調合された、危険なシロモノが詰まったペットボトルがこちら。色もテクスチャーも禍々し過ぎる。
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 さらに李氏は、続けてこうも警告する。
液体が発酵する過程で生成されるアンモニアやホルムアルデヒド、硫化水素には、中毒を引き起こすリスクがあります。

さらに呼吸器系や消化器系への不快感やめまい、中枢神経系にダメージを与える可能性も。

また、材料に使われる虫や動物の死骸には、危険な細菌がたくさん含まれています。発酵中にその数が増えてしまう恐れもあるのです
 ここまで来るとこの液体は立派な生物兵器であり、中身をまき散らすのはテロ行為だと言えるのではないだろうか。  こちらは別の爆発シーン。

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image credit:微博
 いったいなぜこのようなブームが起きているのか、理解に苦しむしかないのだが、現地のSNSを見ると「20年前にもやってたわ」という親世代の声がちらほら。

 てことはアレか、流行り物は周期的に繰り返すっていうやつで、中国の親たちは同じことをやってたわけか?

 とにかくこれ以上被害が広がらないよう、当局では学校と保護者が協力して子供たちを監視するよう呼びかけている。

 とはいえ相手はインターネット世代の子供たち。大人たちはこの生物兵器への対応に、かなり苦慮しているそうだ。