以前と比べたら最近はウクライナの兵士不足や砲弾不足をけっこう報じるように、なってきたウクライナ応援の西側大手メディアですが未だにNATO提灯記事を書き続ける西側メディアが認めていないのは「ロシア軍のほうが兵器の量だけでなく兵器の質、軍事技術においてもNATOより優れている」ということです。欧州メディアはウクライナが苦戦している理由として砲弾、大砲、戦車などの兵器の「量」がロシア軍のほうが多いからということはすでに認めています。しかしどうしても認めたくないのが「量だけでなく兵器の”質”、実際に戦場において使われている軍事技術においてもロシア軍のほうが優れている」という事実です。だから最近NATOのストルテンベルグ事務総長は「NATO加盟国がウクライナに与えた長距離ミサイル、長距離砲等をロシア国内(ここで言う"ロシア国内"にはクリミアは含んでおらずロシア本土のことを言っています)に向けて使う許可をウクライナ政府に与えるべきだ。」と言い始めましたそして戦争のさらなるエスカレートを煽るビクトリア・ヌーランドも含め米のネオコンたちは「長距離砲でロシア国内を攻撃すればロシアを追い詰めることができる」と言っていますが果たして本当でしょうか。実のところウクライナ軍は今でもロシア本土をNATOの兵器ですでに攻撃しています。それはチェコ製の無誘導多連装ロケット砲ヴァンパイアでロシア国内のベルゴロド州の全く軍事施設がないところを頻繁に攻撃していて多数の民間人の死者が出てしまっているのでこれがプーチン大統領が「ハリコフに”緩衝地帯”を作らなければならない」と言っている理由です。長距離砲長距離ミサイルについてはクリミア半島に対して頻繁に使われていますがこれは「クリミア半島はロシア領ではない」としてNATOがウクライナ軍に使用許可を出しているものです。そこで使われているのが空対地ミサイルである英のストームシャドウ、仏のスカルプ(ストームシャドウと同じ)と多連装ロケット砲HIMARSと同じ発射台を使用する地対地ミサイルATACMSです。イギリスがウクライナに「ストームシャドウ」を供給したのが昨年5月ですでに1年が経過していてフランスが英に続き「スカルプ」を供給、米のATACMSと続いてクリミア半島に対してそれらは1年間ですでに数百発は使用されているのですがそれによってクリミア半島のロシア軍が壊滅したでしょうか?何度かクリミアの防空システムを通過して基地や燃料タンク、少数の航空機等にヒットしたことはありますが、クリミアのロシア軍は全く「壊滅」などしていませんし追い詰められてもいません。そればかりかロシア軍はそれらの長距離砲をどうやったら撃ち落せるか研究してこれらの兵器が使われ始めた初期の頃と比較して今ではこれらの長距離砲の有効率がかなり落ちてしまっています。これらの長距離ミサイルの有効性を格段に落とすのに役立っているのがロシア軍の電子戦の能力です欧州大手メディアのワシントン・ポストがそれを認めていますので今回ワシントン・ポストの記事を引用したロシアメディアRTの記事をご紹介します。

ロシアの妨害により米国が供給した兵器の多くが無効に – WaPo
ウクライナ当局はモスクワの電子戦能力のためキエフはアメリカ製兵器の使用を一部中止せざるを得なくなったと述べた。ワシントン・ポスト紙は金曜日(5/24)衛星誘導に依存する米国製兵器の多くがキエフに供給された後、ロシアの妨害技術に耐えられなかったと報じた。同紙によるとロシアの広範な電子戦能力のためウクライナ軍はこうした兵器の一部の使用を全面的に中止せざるを得なくなったという。報告書によると影響を受けた弾薬にはエクスカリバーGPS誘導砲弾、HIMARS多連装ロケット発射システム用ロケット、航空機投下爆弾JDAMなどが含まれる。ウクライナ当局者がワシントンポスト紙に語ったところによると米国は半年前にエクスカリバー砲弾が無効になったとの報告を受けて同砲弾の供給を完全に停止したという。同紙はキエフ政府による内部評価も見直したと伝えておりそれによるとこの兵器の成功率は数か月以内にわずか10%に低下したという。「既存のバージョンのエクスカリバー技術はその可能性を失っている」と文書には記されておりロシアの妨害工作に遭遇したことで「一撃必殺」兵器という評判が覆されたと付け加えている。HIMARSシステムは2022年にキエフに提供されてから注目を集めたが翌年「すべてが終わった。ロシアは電子戦を展開し衛星信号を無効にし、HIMARSは完全に無効になった」とウクライナ軍の高官は不満を漏らした。このためキエフは「非常に高価な砲弾」を優先度の低い標的に配備せざるを得なかったと同氏は述べた。ウクライナの評価ではJDAMの成功率も2023年2月にキエフに初めて提供されてからわずか数週間で大幅に低下したと強調されている。これはJDAMが妨害電波に「耐性がない」ことが明らかになったためである。その期間中米国製の爆弾は目標を200メートルから1.2キロ外していたと同評価は述べている。ウクライナ当局者はワシントンポストに対しワシントンの「過度に官僚的な手続き」のせいで「機能不全の兵器」に必要な調整を施すのは困難だと語った。しかし情報筋によるとJDAM の場合、製造業者はパッチを提供することができキエフでは今もこの兵器が使用されているという。(訳者注:しかし命中率は今でも低い為使用頻度も低いです。)

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は土曜日2022年2月にモスクワとキエフの間で紛争が始まって以来同国での電子戦装備の生産が15倍に増加したと述べた。ロシアは米国とその同盟国によるキエフへの武器システムの提供はモスクワの軍事目標達成を阻止するものではないと繰り返し警告しておりそれは単に戦闘を長引かせるだけでロシアとNATOの直接対決のリスクを高める可能性があると付け加えている。モスクワ当局者によると武器の提供、情報共有、ウクライナ軍の訓練は欧州諸国がすでに事実上の紛争当事者になっていることを意味するという。多連装ロケット砲HIMARS,誘導爆弾のJDAMはロシア軍の電子戦によって著しく有効率が落ちているのでHIMARSと同じロケットランチャーを使用するATACMSについても同様のようです。クリミア半島での例だとATACMSを10発撃っても防空網をすり抜けて電子戦の妨害もすり抜けて当たるのは1,2発位になっています。英のストームシャドウは最初2023年5月頃はロシア軍もこのミサイルの特性がよく分かっていなかったようで撃った最初の4,5回はほぼ確実に目標に当たって成功していたようですがほぼ無傷のストームシャドウがおそらく電波妨害を受けて田園地帯に落下しロシア軍に捕獲されるということが起こりそれを持ち帰ってロシア軍が色々と構造を研究した後くらいから急速に有効性が落ちていきました。ですからストームシャドウと全く同じ構造である仏のスカルプがウクライナに数百発届いた時も全く動じていなかったのがロシア軍です。そして最近ではイーロン・マスク氏のSpaceX社がウクライナに提供しているStarlinkがロシアのハリコフ侵攻の際に全く使い物にならなくなったということが起きています。これについてはニューヨーク・タイムズの記事をご紹介します。

ロシアは新たな取り組みでウクライナのスターリンクサービスにますます妨害を加えている。
ロシアはイーロン・マスク氏の衛星インターネットサービスに干渉するために先進技術を導入しており北部戦線でのさらなるサービス停止につながっているとウクライナ当局が明らかにした。今月ロシア軍がウクライナ北部国境に侵攻する直前ウクライナ第92突撃旅団のメンバーは重要な資源を失った。兵士たちが通信や情報収集、ドローン攻撃を行うために使用するスターリンク衛星インターネットサービスが極端に遅くなってしまったのだ。イーロン・マスク氏のスペースXが運営するスターリンクはロシアとの戦争が始まった当初からウクライナ軍にとって欠かせない存在だった。ウクライナ軍兵士らによるとこの完全なサービスがなければ奇襲攻撃に関する情報を迅速に伝達・共有することができずテキストメッセージの送信に頼らざるを得なかったという。ウクライナ軍兵士当局者、電子戦専門家らによると新たな北部戦線でも同様の体験が繰り返されたという。

機能停止の根本原因はロシアからの干渉の増加
ロシア軍は今月ウクライナ第2の都市ハルキフ近郊で勢力を拡大しスターリンクのサービス妨害を目的により強力な電子兵器やより高度なツールを配備したとウクライナ当局は述べた。この前進はウクライナにとって大きな脅威となる。ウクライナはこれまで前線の接続技術やその他の技術の助けを借りてロシア軍の裏をかくことに成功してきたがロシア軍の新たな前進に対しては防御に回っている。ロシアがスターリンクに広範囲にわたる機能停止を引き起こしたのは今回の障害が初めてとみられる。ロシアが今後も障害に成功すれば紛争の戦術的転換を示すことになりウクライナの脆弱性とマスク氏の会社が提供するサービスへの依存度が浮き彫りになる。米国やその他の政府がスペースXと協力する中、今回の障害は技術的に高度な敵に対するスターリンクの信頼性についてより広範な疑問を提起している。スターリンクは地球の周りを周回する衛星からインターネット接続をビーム送信することで機能する。地上ではピザ箱サイズのアンテナ端末が信号を受信しそこからWi-Fiルーターのようにノートパソコンや携帯電話、その他の近くのデバイスに接続が配信されるスターリンクは2022年以来ウクライナに重要なインターネットサービスを提供しており兵士たちは監視や兵器などに使用されるインターネット接続ドローンの誘導にスターリンクを頼りにしている。ウクライナのデジタル大臣ミハイロ・フェドロフ氏は今週のインタビューでロシアによるスターリンクへの最近の攻撃は新しくより高度な技術を使用しているようだと述べた。同サービスはこれまで電子戦、電波妨害、その他の通信妨害が広範囲に及ぶ戦場での妨害に対して驚くほどよく持ちこたえてきた。

しかしロシアは現在「スターリンクの接続品質を妨害するさまざまなメカニズムをテストしているなぜならそれは我々にとって非常に重要だからだ」とフェドロフ氏は述べたが同氏の言うところの「強力な」電子兵器システムの詳細については明らかにしなかった。ウクライナは問題解決のためにスペースXと絶えず連絡を取っていると同氏は付け加えた。スペースXはコメントの要請に応じなかった。ロシア国防省はコメント要請に応じなかった。ロシアの電子戦活動を率いる当局者は先月国営メディアに対し軍はスターリンクを「標的リスト」に載せ同サービスに対抗する能力を開発していると語った。フェドロフ氏はスターリンクのサービスはすぐに改善するはずだと述べたが兵士や当局者によると一部の障害はロシアの攻撃に合わせて発生したようだ。戦場の重要な瞬間に障害が起きればただでさえ手薄なウクライナ軍はさらに不利な状況に陥ると彼らは述べた「我々は電子戦の戦いに負けつつある」と第92アキレス攻撃ドローン大隊の副司令官のコールサインであるアヤックス氏はインタビューの中でスターリンクの接続が失敗した後に部隊が直面した課題について語った。「攻撃の前日に突然停止した」とウクライナ軍の方針に従いコールサインで名前を明かすことを条件に語ったアヤックス氏は語った。「ものすごく遅くなった」コールサイン「カルテル」のドローンパイロットは混乱で部隊全体が不利な状況に陥ったと語った。今月ロシア軍が攻勢に出た最初の機甲部隊の攻撃の際、彼は食料も寝袋もないままガレージにいたという。彼の部隊はドローン攻撃を開始したがスターリンクとの接続問題で妨げられた。通信が遅くなりすぎて兵士たちはチャットアプリでテキストメッセージを送るしかなくそれでもメッセージが届くまでに時間がかかったという。「最初の数時間は前線が非常に動いていました。敵は動いていました。そして我々も動いていました」と彼は語った。「我々は迅速に連絡を取る必要がありました。」同氏によると部隊は3日間にわたりロシア軍を撃退したが困難がなかったわけではない。「すべてがより複雑になった」と同氏は語った。「すべてがより時間がかかるようになった」元米国防総省職員で電子戦の専門家であるカリ・A・ビンゲン氏はスターリンクやその他の衛星通信は高出力の無線周波数を使用して接続リンクを圧倒することで妨害できると述べた。目に見えない攻撃は通常上部に大きな無線塔を取り付けた車両から行われると同氏は述べた。「ロシア軍の標的になるのは当然だ」とワシントンのシンクタンク、戦略国際問題研究所の航空宇宙安全保障プロジェクトのディレクターを務めるビンゲン氏は言う。「ウクライナ軍の戦場での通信能力を低下させている」過去1年間のウクライナにおけるスターリンクの停止についてはさまざまな説明がなされている。ロシアは強力で精密な妨害装置を使い衛星と地上のスターリンク端末間の信号に干渉する技術を向上したと複数の専門家が指摘している。またドローンに搭載された特殊な電子兵器がスターリンクのGPS信号を混乱させ衛星の位置特定に役立てる全地球測位システム(GPS)を混乱させることでサービスが中断されたとの見方もある。スターリンクの利用が急増するとサービスの質が低下することもある。ロシア軍がスターリンクを利用しないようにするための技術的制限により前線に展開するウクライナ軍のサービスが損なわれた例もある。また今月初めにスペースXが太陽嵐による世界的なサービス障害を報告したように中断はよりランダムに起こることもある。紛争中ウクライナ軍はスターリンクを攻撃から守るため地面に掘った穴に端末を設置したりその上に金網を張ったりするなどさまざまな手法を試してきた。軍と協力し電子戦用ツールの製造を専門とするウクライナの企業インフォザヒストは、こうした即席の解決策は効果的ではないと考えていると述べた


スターリンクは衛星サービスが利用できる場所をマスク氏が管理しアクセスを遮断する選択もできるため、同氏に戦争における大きな影響力を与えている。ウクライナ当局は軍事作戦中にスターリンクのアクセスをオンにして敵陣を越えてドローン攻撃を行うようマスク氏に直接要請した例もあるが億万長者の同氏は必ずしもその要請を承認したわけではない。ウクライナ向けにスターリンク端末を購入した米国政府は交渉に介入することもあった。スターリンクはロシアに直接販売されているわけではない。しかし今年ウクライナ当局はロシアがサードパーティベンダーから購入したスターリンク端末を使用しておりウクライナの接続性優位性が損なわれる可能性があると公に警告した。専門家らはウクライナはこのような重要な資源を単一の企業特にマスク氏のような予測不可能な人物が経営する企業に過度に依存していると警告している。しかしウクライナのスターリンクへの依存が減る可能性は低い。これほど包括的で信頼できるサービスに代わるものはほとんどないからだ。フェドロフ氏はウクライナ政府は常に新しいシステムをテストしていると述べた。同氏は軍は海上ドローン用の特殊システムを有しており黒海でロシアの船舶を多数破壊したと述べた。「しかしもちろん大量生産された同等品はない」と彼は語った。ウクライナ軍司令官のアヤックス氏にとってスターリンクのサービスが失われたことは戦争の嫌な思い出をよみがえらせた。2022年にロシア国境付近で戦った際彼の部隊はスターリンクから遮断されることがあり遠くから砲撃を狙うために使われていたドローンの映像が途絶えた。その代わりに部隊は兵士を配備し敵の位置をひそかに監視し攻撃を指揮した。「無線では昔ながらの方法になりました」と彼は言う。『左に100フィート移動』と言わなければなりませんでした。とても奇妙でした。」上の記事で分かる通りロシア軍の電子戦における優位性も明らかになってきています。ウクライナが米国から提供されたGPS誘導性爆弾JDAMをロシア軍が電子戦で妨害して

ほとんど使えないものにしてしまった一方でロシア軍が多用しているGPS誘導の滑空爆弾FABにはウクライナ軍は全く対応できていません。FABには重量が重さ250kgのFAB-250から1.5トンのFAB-1500まで様々な重さと破壊力が違うタイプがあってウクライナ軍が人的被害がかなり多い原因はこのFABを止められないことにあります。このGPS誘導の滑空爆弾FABについてはロシア軍が昔から大量に備蓄していた爆弾にGPSと羽とを付けたシンプルな構造でこれは最も大きいFAB-1500になると塹壕に隠れている兵士にまで塹壕ごと吹き飛ばすほどの威力を持っています。ですからウクライナ軍の死者数がロシア軍の死者数よりも桁違いに多くなっているのです。

兵器の数でも生産力でも兵器の質でもさらに電子戦の能力においてもNATO+ウクライナを上回っているのがロシア軍なのにすでにクリミア半島に何百発と使ってさほど成果も挙げられていない長距離砲をロシア国内に使うことで「戦況をひっくり返せる」と的外れなことを言っているのがネオコンのヌーランド氏でありNATOのストルテンベルグ氏なのです。嘘の情報で戦争のエスカレートを正当化し私たちを第三次世界大戦や核戦争の危機にまで追い込んでいるのは「いつでも交渉はする。ただし現状を認めるところからスタートしなければならない」と言っているロシアのプーチン大統領ではなく欧州の反ロシア連合です。スロバキアのフィツォ首相が襲われ重傷となった今このNATOの”狂気”を内側から止めるのはハンガリーのオルバン首相一人だけでは十分ではないでしょう。しかし最近イタリアがNATO長距離兵器のロシア国内への使用という話に反対しているだけでなくロシアの凍結資産3000億ドル相当の没収にも強く難色を示し始めました。第二次世界大戦ではドイツ、日本と共に「日独伊三国同盟」で枢軸国側にいたイタリアは真っ先に降伏して大戦末期にはかつての同盟国日本に対して宣戦布告までして戦後賠償金まで請求するという変わり身の早さも持っているのがイタリア人ですのでイタリアあたりから「これ以上”負け馬”に乗り続ける意味があるのか?」という政治的な動きが出てきてもおかしくないでしょう。