① 経済的理由--新疆・ウイグル自治区に眠る豊富な天然資源

(日本ウイグル連盟より)

1980年代後半に新疆ウイグル自治区には莫大な量の油田、天然ガスなどが発見された。現在石油、石炭、天然ガスは中国全体のそれぞれ約30〜40%。豊富なレアアースもこの地域の潜在力を高めている。中国が世界のレアアース市場占拠率に占める割合は約97%

「東トルキスタン」として独立も可能

面積では中国の1/6という新疆ウイグル自治区もし「東トルキスタン」として独立しても、十分な経済能力を担保できる埋蔵量どころではない。世界の安全保障上におけるプレイヤーにすらなり得る。

ウイグルの天然資源で 世界を牛耳る

結晶, ガベージ, 自然, バッチ, リソースそのすべてを中国共産党が吸収。これら天然資源を強大なパワーとして世界経済をねじ伏せようとさえしている。2010年日本がレアアース輸出禁止措置で攻撃された記憶のある方もいるだろう。自らのパワーの源泉を中国共産党はみすみす逃すつもりはないはずだ。

80年代後半に発見された天然資源

80年代後半に新彊ウイグル自治区で大量の油田、天然ガス、石炭鉱が発見された。もともと中国で年間消費されている石油、天然ガス、石炭といった資源エネルギーの3~4割がウイグルで採掘されたもので黄金も採れる。貴重な資源が大量に眠るウイグルが独立して力を持つことを中国は何としてでも阻止したいと考えている。

日本の天然資源にも触手

1969年尖閣諸島付近に眠る巨大な海底油田が発見されると1971年中国は突如その領有権を主張。日本の領土も脅かしている。この例からも天然資源の獲得へ尋常でない執念を見せることがわかる。

② 国際戦略 --「一帯一路」構想の拠点

シルクロード (wikipediaより)

習近平共産党政権が掲げる一帯一路は現代版「植民地政策」と揶揄される。中国による世界経済の支配がその狙い。各国をチャイナマネーで借金漬けにさせて支配下におくいわゆる「債務の罠」がその実態。

「債務のワナ」に落ちる各国

援助を受けているつもりがいつの間にか巨大な借金を抱え重要インフラを中国に差し出している国が続出している。インド洋に面したスリランカの安全保障上重要な港湾は、借金のカタに99年間 中国政府へ「リース」国家財政の債務に悩まされるギリシャは中国からは欧州の玄関口として見られている。やはり欧州最大の旅客港であるピレウス港が買収された。

イスラム教諸国も 中国マネーの言いなりに

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同胞であるイスラム教諸国も信仰の自由より 自国の経済利益を優先させているとの批判を逃れられない。信じられないことに同じイスラム教を信じるイラン、イラク、サウジアラビアが中国政府によるウイグル支配を適切であると同意不幸なことにアラブ諸国の悪しき伝統として、自国がそもそも人権問題を抱えているケースが多い。それに目を向けられて困る一面も否定できない。かろうじて同じテュルク系民族の国であるトルコ共和国が反発することはあるが中国は意にも介さない。国際社会の足並みが、経済を人質に取られていることで揃わないことを見抜かれている。

一帯一路の目的は 世界支配

では一帯一路の狙いとは何なのか?生産過剰になった中国製品の売り先がなければパワーの源泉である中国経済が失速する。また一帯一路企業に投資することで共産党子弟が国内の汚職で取得した汚いお金を海外に投資することでマネーロンダリングも可能だ。しかしこれら一帯一路の狙いの先にあるのは「中国の夢」身も蓋もない言い方をすると中華民族による世界征服だ

一帯一路の要 新疆ウイグル自治区

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地図を今一度見て頂くと一目瞭然だが新疆ウイグル自治区は地政学上その重要な要衝。いや中心軸だ。その地域の住民が共産党以外の神アラーを心から信仰するイスラム教徒であることを恐れているのが中国政府。一帯一路を成功させるためには新疆ウイグル自治区を漢人支配下におきたい。だから生存しているウイグル族には漢人との同化政策が押し進められる。老若男女を問わず強制収容所でイスラム文化を捨てさせ漢人文化を摺り込ませ血統ですら漢人と同化が推進されるのはそのため。

751年「タラス河畔の戦い」= イスラム文明 vs 中華文明

751年「タラス河畔の戦い」は唐(中国)とアッバース朝(イスラム教)による天下分け目の戦いとして記録されている。この戦いに勝利したアッバース朝により以後イスラム勢力による中央アジアの安定支配が確立。この時に捕虜とされた唐の製紙職人たちがイスラム圏に製紙技術を伝承。コーランが広まる上で世界史的に重要な意味のあった出来事でもある。中国は1200年もの昔からこの地域を狙っていたとも言える。2009年7月のウイグル事件はかねてより中国政府がウイグル族を迫害していたことにより発生。中国政府に不満を抱くデモ隊へ治安部隊が発砲、暴動に発展。直後に数多くの若いウイグル人男性が「失踪」したことになっている。

2014年テロ

最近の弾圧が常軌を逸するきっかけは2014年4月習近平主席が初めて新疆・ウイグル自治区を訪問した時のテロ事件。彼は自分を狙ったと思われるテロによりウイグル族への憎しみと恐怖を覚えたようだ。それ以降ウイグルでの監視と弾圧がそれまで以上に悪化した。チベット支配で実績のある陳全国氏を 新疆ウイグル自治区共産党トップして異動。習近平主席の側近とされる彼が職業訓練所という名目で多くの強制収容所を建設。再教育と称し「テロ防止」に勤しんでいる。

ウイグルをスカウトするIS

少数とはいえ新疆ウイグル自治区からISに流れたウイグル人がいるのも確かではある。ではその実態は?一つはやはり中国共産党に洗脳された自作自演スパイ行為を働く者。もう一つは民族迫害が続けられる中国での生活に困るウイグル族にISが家族の生活資金も保障しスカウトをしていたという。ウイグルで迫害を受けていた彼らがシリアでは現地住民を迫害する立場に。匿名でインタビューを受けたウイグル人のISメンバーは自分の心がもうバラバラになってしまったことを嘆いている。中国共産党、ISと関係のない世界に生まれていたら彼の人生も違っていただろう。

元々は多民族が仲良く共生していた中央アジア

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ISテロ対策が名目では国際社会も反論が難しくなる。それを巧みに利用しているの中国政府。彼らはイスラム教を邪教とみなしており再教育を施すことで治療していると弁明。だが中央アジアには元々多様な民族と宗教が互いを尊重しながら生活してきた豊かな歴史があったことには触れられない。ウイグル族を始めとした 中央アジアの少数民族に小さな幸せは再び訪れるのだろうか。

ウイグルを知ろう

これら一方的な理由でウイグル族の幸福を踏みにじることは許されない。ウイグル弾圧は21世紀に生きる私たちの汚点だ。ウイグル弾圧を知った方には一人でも多くの隣人にこの事実を拡散してほしい。

この記事のまとめ

今さら聞けないウイグル問題⑤ - 弾圧の理由は?
  1. 経済 -- 新疆・ウイグル自治区に眠る豊富な天然資源
  2. 国際戦略 --「一帯一路」構想の拠点
  3. 国内政治 -- ISなどのテロを警戒