【新型コロナワクチンと自己免疫性皮膚疾患の関係】接種後に症状悪化のリスクも: 新型コロナワクチンと自己免疫性皮膚疾患の関係性。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは世界中に大きな影響を与えました。その対策として開発されたワクチンは多くの命を救ってきました。しかし一方でワクワクチン接種後に自己免疫性皮膚疾患が新たに発症したり、既存の症状が悪化したりするケースが報告されています。今回はドイツの研究チームによるメタ分析の結果を基に新型コロナワクチンと自己免疫性皮膚疾患の関係性について解説します。【新型コロナワクチン接種後に報告された主な自己免疫性皮膚疾患】メタ分析では以下の6つの自己免疫性皮膚疾患について調査が行われました。水疱性類天疱瘡(BP)尋常性天疱瘡(PV

全身性エリテマトーデス(SLE)皮膚筋炎(DM
扁平苔癬(LP)白血球破砕性血管炎(LV)
これらの疾患は免疫システムが自分自身の体を攻撃することによって引き起こされます。ワクチン接種後新たに発症したり既存の症状が悪化したりするケースが確認されました。【ワクチンの種類や接種回数による違い】
メタ分析ではmRNAワクチン(ファイザー社とモデルナ社とウイルスベクターワクチン(アストラゼネカ社とヤンセン社)の両方で自己免疫性皮膚疾患との関連が示唆されました。ただしmRNAワクチンの方が報告件数は多い傾向にありました。また1回目よりも2回目以降の接種後に症状が現れるケースが多いようです。接種からの期間は疾患によって異なりますが概ね1~3週間以内に発症するケースが大半でした。【皮膚疾患以外の自己免疫疾患への影響と今後の課題】

 今回のメタ分析では皮膚疾患に焦点が当てられていますが関節リウマチなど他の自己免疫疾患への影響も懸念されています。ワクチンの成分と体内のタンパク質の類似性(分子相同性)や自然免疫の過剰な活性化などが関与している可能性があります。ただしワクチン接種のメリットは非常に大きく発症リスクを上回ると考えられています。特に免疫抑制療法を受けている患者さんにとってワクチン接種は重要です。自己免疫性皮膚疾患を持つ方がワクチン接種を検討する際は主治医とよく相談しベネフィットとリスクを慎重に比較検討することが大切だと思います。参考文献:Hinterseher J, et al. Autoimmune skin disorders and SARS-CoV-2 vaccination – a meta-analysis. JDDG: Journal der Deutschen Dermatologischen Gesellschaft. 2023;21:853–861. https://doi.org/10.1111/ddg.15114。ワクチン接種後の自己免疫疾患については学会でも発表のオンパレードでした。

ワクチン接種による発表だけ採り上げ知り得た情報をまとめましたS4-1-1コロナワクチン接種後に発症した抗ミトコンドリア抗体陽性筋炎の一例症例は71歳女性。

2回目のファイザーワクチン接種後翌日から症状が出現。下腿の疼痛が出現し全身に広がり最終的に大学病院に紹介。ステロイド治療で改善。近年コロナワクチン後の特発性炎症性筋疾患を含めた自己免疫疾患の報告が複数なされている。

S4-1-3COVIDワクチン接種を契機に血球貪食症候群を伴う低補体血症性蕁麻疹様血管炎を発症した一例

症例は61歳男性。コロナワクチン1回目接種して2週間後に発熱、多関節痛、市販、蕁麻疹で発症2回目接種後に症状悪化。血液検査と皮膚生検で低補体血症性蕁麻疹様血管炎(HUVS)と診断。ステロイドパルス療法にて改善。本症例はCOVIDワクチン接種後にHUVSを発症した初めての症例報告。ワクチンに起因する免疫学的恒常性の破綻によりHUVSや血球貪食症候群を発症したと推察。

S4-1-4SARS-CoV-2 RNAワクチンで発症しCOVID-19罹患にて増悪したIgA血管炎の一例症例は16歳女性

ワクチン2回接種後に両下腿に紫斑が出現皮膚生検でIgA血管炎と診断。ステロイドにて改善。その後家族がコロナ発症。腹部症状や市販が増悪したため再入院。PCR陽性と判明。尿蛋白・潜血が出現。難治性ネフローゼ症候群合併IgA血管炎と診断。リツキシマブにて改善し退院。ワクチン接種後に発症しその後コロナに感染して病態が増悪した報告はない。この症例では腎臓や皮膚組織中の新型コロナRNA陰性と抗原陰性を確認しており組織へのウイルスの直接的な感染よりもワクチン接種および気道感染によって誘発された過剰な免疫応答に伴う3型アレルギーによる病態が示唆された。S4-2-1Coronavirus disease 2019 ( COVID19 )ワクチン接種後に間質性肺疾患を発症した関節リウマチ(RA)の一例症例は66歳女性

もともと間質性肺疾患(ILD)合併のRA(リウマチ)があったが治療により寛解し経過良好だった3回目接種直後より咳嗽、呼吸困難感あり胸部レントゲン及び肺CTで両肺にすりガラス影が出現。他疾患鑑別の上ワクチンによるILDと診断。大量ステロイドにて改善。ワクチンによるILDは接種直後に肺CTで「びまん性の斑状すりガラス影」を特徴とする。SARS-CoV2ワクチン接種後に発症した成人発症Still病の一例症例は58歳女性。3回目接種翌日より38.5度の発熱5日後より皮疹、咽頭痛が出現。ステロイドにて症状軽快したがステロイド減量後に症状再燃。発熱、サーモンピンク疹、白血球増加、咽頭痛、リンパ節腫脹、肝機能障害、高フェリチン血症を認め成人発症Still病(AOSD)と診断。ワクチン接種後にAOSDを発症した報告は複数あり

ファイザーとアストラゼネカワクチンでも報告されている。mRNAはToll様受容体を介して自然免疫を活性化するためAOSD発症の誘引になっていたかもしれない。S4-2-3SARS-CoV-2ワクチン接種後に関節リウマチを発症した2例症例1:70歳女性3回目の接種翌日より両肩、両肘、両足関節の疼痛、朝のこわばりが出現、諸々の検査で関節リウマチと診断。症例2:73歳男性3回目の接種1週間後に両肩、両肘両手の疼痛が出現、諸々の検査で関節リウマチと診断。S4-2-4SARS-CoV-2ワクチン接種後に発症したリウマチ性多発筋痛症の2例症例1:73歳男性。2回目接種の4日後に右肩の疼痛が出現し左肩や下腿、腹部にも疼痛が出現。検査にてリウマチ性多発筋痛症を診断。ステロイドにて治療。症例2:56歳女性初回接種の5日後に38度の発熱と多関節痛、頭痛が出現。その後も両上腕や股関節の疼痛が持続。検査にてリウマチ性多発筋痛症と診断。ステロイドにて治療。S4-3-4COVIDワクチン投与後に自己免疫異常を呈した4例

 4例とも膠原病疾患の既往がなくワクチン接種後に自己免疫異常を呈した。症例1:80歳男性。3回目接種して3日後より全身痛、炎症所見、急性腎不全を認めた。症例2:68歳男性。2回目接種後より体重減少を自覚。1か月後より朝のこわばりや両肩痛を認めリウマチ性疾患が疑われた。症例3:48歳男性。初回接種翌日より倦怠感が持続抗菌薬が効かない発熱、関節痛、咽頭痛が出現。成人発症Still病を疑われた。症例4:44歳女性。初回接種直後よりそう痒性皮疹が持続、尋常性乾癬と診断。3回目接種後から多関節痛が出現し乾癬性関節炎と診断。S4-3-5関節リウマチ患者ではCOVID-19ワクチン接種を契機に関節炎の再燃や免疫関連疾患の発症が見られるワクチン接種後の関節痛は関節リウマチ(RA)患者の3.6%で増悪がみられ7日間以上持続。関節痛出現頻度は有意にRA患者で多かった。ワクチン接種後に関節痛が出現及び増悪したRA患者のうちRAが再燃し治療強化を必要とした症例は76%に及んだ。間質性肺炎急性増悪、低補体血症性蕁麻疹様血管炎、胸水貯留リウマトイド結節、結節性紅斑を併発する症例を認めた。また皮膚筋炎については接種との関連が疑われています。 抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎で亡くなった八代亜紀さん。 接種後に増えていることが論文でも報告されています。RA患者ではワクチン接種後にRA再燃や免疫関連疾患を来すことがあるので診療上注意が必要である。ワクチン接種後すぐに症状が出現している症例が多いことに驚きました。ワクチンを接種してから数ヶ月経ってから何か症状があってもワクチンのせいだと思わない患者さんも多く医師もワクチンとの因果関係を疑うことは少ないです。これだけ早く症状が出現すると本人も診察した医師も分かりやすいですね。最初からワクチン接種後の自己免疫疾患が懸念されると井上正康先生や岡田正彦先生、宮澤孝幸先生などが指摘され警鐘を鳴らしておられただけに残念です汗大学病院や地域の大きな基幹病院の先生方がこのような発表をされていることに敬意を表したいですし今後も同様の症例が蓄積されていくことでワクチンの副反応や接種後死亡が医学的に解明されることを期待します。