SNSやマッチングアプリなどで出会った人から、恋愛感情を利用して金銭を騙し取る「ロマンス詐欺」が世界中で被害者を出し続けている。
韓国人男性Jさん(34)は、台湾在住の「日本人女性」と名乗る方にフェイスブックを通じてやり取りをはじめた。
ビザを取って、韓国で一緒に生活したいと持ちかけられ、お金の工面を申し込まれる。
結局、160万円を送金してしまい、その後、音信不通になってしまう。
詐欺だと気づいたJさんは、それまでに台湾の電話番号からかけてきた女性とやり取りしたことがあったのを思い出し、その番号をもって台湾の警察に駆け込んだ。
台北市警察局の担当者は当初、「台湾の電話番号であっても、犯人はナイジェリアや中国の人間であることが多い」という話をしていたが、その番号が以前、旧統一教会関連の被害で使われた番号と同じだったことが判明した。
そこから浮上したのが教会の信者グループ8名だった。
日本と同様、台湾でも旧統一教会は巨額の寄付金が問題になっているが、教団は政界に食い込んでもいるという。
「問題の信者グループは過去、寄付ノルマをこなすため、別の詐欺事件を起こしていたようです。でも、その矛先が教団に向かわないためか、4月ごろにはグループごと脱退して、教団は警察に『辞めた人々のことなので分からない』と返答したそうです」
信者グループは台湾人のほか、本土出身の中国人もいたというが、なぜ彼らが日本人を成りすましたのかは分からない。
フェイスブックでは、美女のプロフィール写真なのに「水慎水太郎」という奇妙な男性名になっていた。
「私にはそれが男性の名前と分からなったので…」とJさん。
その後、彼が韓国の警察にも捜査協力してもらっていたところ、台湾ではグループのひとり、電話に出たと思われる女性が警察に連行されたという連絡があったという。
そして、その女性は少なくとも2名の日本人、4名の韓国人、計6名の男性と電話で話して金をだまし取ったと供述した。
「ただ、女性は電話で話すことを頼まれただけで、4000台湾ドル(約1万8千円)ぐらいの少ない報酬をもらっただけだそうです」(同)
「水慎水太郎」などという奇妙なアカウント名、日本人ならおかしいと気付きそうなものだが、ロマンス詐欺の厄介なところは、主に外国人を狙うため、言葉のコミュニケーションがしっくりこなくても相手を信じてしまうことである。
そして、国境を超えているため捜査を難しくさせている。
多くの手口は、ルックスの良い男女を装って、恋愛感情を利用。結婚をほのめかしてビザ費用や渡航費、将来の結婚資金などが要求される。
7月下旬、台北市警察局に問い合わせると、「事件については捜査中のため」と現状について教えてもらえなかったが、「被害報告があっても、必ずしも有罪とできないものもあり、とても厄介」とした。
また、旧統一教会の信者グループによる犯行と見られるが、「教団が関わったという証拠がない限り、教団への捜査はない」との回答だった。
台湾での宗教による巨額寄付問題に取り組んでいるリー・シリン氏によると、「最近は信者が減少傾向にあるせいか、教団の寄付ノルマが厳しくなって、犯罪に走る信者がいる。
しかし、あくまで寄付なので教団は関与していない立場で逃げている。
台湾では旧統一教会は政治団体を持っているので、警察も安易に捜査をしたがらない」という。
日本で起こっている問題とかなり類似性があるが、「台湾の場合、黒社会と呼ばれるマフィアの連中が、集金の手助けをしたり、詐欺をやる信者を国外に逃がしてからやらせるケースもあって、なお立件が難しくなっている」そうだ。
被害者に日本人がいることについても、台湾警察局は回答しておらず、日本でもこれと結びつく被害報告はまだ聞かれていない。
ロマンス詐欺の場合、「事件として発覚したら恥ずかしい」と思う被害者が泣き寝入りするケースもあり、伝えられている以上の被害があると推察できる。
日本では安倍晋三元首相の殺害事件から家庭連合をカルトと見る見方が強まったからか、一部の信者たちが無数の関連団体などに移って別動隊として活動していることが分かっている。
万一にも彼らが台湾のように犯罪までして集金活動を始めるというなら、ゲリラ的な反社会的集団として手に負えなくなってしまうが…。