1月18日、計8人の男を営利目的略取と監禁の容疑で逮捕したと京都府警が発表した。

 

主犯格とされたのは大阪市の会社役員・杉山玲央(れお)容疑者(30)だ。

 

社会部記者が解説する。 

 

「昨年6月、杉山は自身が経営する大阪市のスポーツジムで、会員の男性が多額の暗号資産を所持していると耳にし、犯行を計画。

 

ジムでトレーニング中の男性を車で連れ去り、滋賀や京都のゲストハウスなどに監禁。

 

粘着テープで縛った上、『逃げたり、嘘をついたりしたら家族を殺す』と脅して頭部を踏みつけるなどの暴行を繰り返し、ビットコインなど仮想通貨の口座のパスワードを聞き出した。

 

1億円以上に相当する暗号資産を奪っています」  

 

監禁は20日以上に及んだが、男性は何とか自力で脱出。

 

通行人に助けを求めたことで事件が発覚した。 「暗号資産は別の人物名義の口座に移されており、府警は杉山らの関与を調べています」(同前)  

 

杉山は姫路市生まれ。

 

高校まで地元で過ごし、野球部に所属。推薦で東海大学海洋学部に進み、2015年に卒業後、三菱電機の100%子会社、三菱電機冷熱機器販売に就職した。

 

「髪を染め、ホストのような風貌で、無断欠勤が多く、営業も粗雑。仕事をすっぽかすなど、当たり前のことができないため客の評判は最悪。その割に自己評価は高かった」(杉山の元同僚) 

 

そんな杉山が就職できたのには理由があった。 

 

「実は、彼の父親は三菱電機で一昨年まで社長を務めていた杉山武史氏なのです。息子の就職活動時は常務で、関連会社に息子を入れようとしたが軒並み断られ、ウチが引き取ったと聞いています。周囲も気を遣い、強く注意することができなかった」(同前) 

 

三菱電機といえば、売上高4兆5000億円、従業員は連結で15万人近い日本屈指の大手電機メーカーだが、武史氏の評判について経済部記者が語る。 

 

「自分で『モーレツ社会人だった』と語るほど仕事一筋。

 

15年には三菱電機にとって過去最大の885億円に及んだイタリアの空調メーカー・デルクリマの買収を成功させ、18年に社長に就任しています」 

 

コネ入社については、 「トップが息子をどこかに入れたいと思ったら、自分のところの関連会社に頼むなんて話は、いくらでもあるじゃないですか」(同前) 

 

その父も、社長就任から3年後の21年、思わぬ事態に直面する。 

 

「約35年にわたる検査不正が発覚。結果、引責辞任を余儀なくされた。

 

後任に専務だった漆間啓氏を据え、本人は特別顧問に就任。経営に直接はタッチしないとはいえ、顧問の報酬も支払われる形で、見せかけの引責辞任だと批判されました」(前出・経済部記者)

 

さて溺愛された息子の今後はどうなるのか。

 

元検事の郷原信郎弁護士が語る。 

 

「被害者が抗拒不能な監禁中の暴行によって大金を脅し取った極めて悪質な犯行です。実刑は免れず、懲役3~4年ではないか」  

 

顧問を務める三菱電機を通じて武史氏に取材を申し込んだが回答なし。同社広報は、「当社としては関知せず、お答えできることはありません」。  

 

だが、三菱電機と杉山玲央容疑者との関係は、「就職」だけではなかった。

 

杉山容疑者は退職して起業すると、三菱電機グループと取引を始めるのだ。 

 

杉山前社長と息子、そして三菱電機はいかなる関係にあったのか。

 

2月13日(月)12時配信の「 週刊文春 電子版 」のオリジナル記事で詳報する。