”胃薬として広く処方されるプロトンポンプ阻害剤がインフルエンザ、肺炎、新型コロナの発症リスクの上昇と関連しているという論文”

 胃潰瘍や逆流性食道炎の「第一選択薬」プロトンポンプ阻害剤(PPI)というのは、胃酸の分泌を抑制する薬で、逆流性食道炎や胃潰瘍、あるいは胃痛や胸やけなどに、日本でも海外でも広く処方される薬です。日本ですと以下のような商品名のものとなるでしょうか。

・オメプラール・タケプロン・パリエット・ネキシウム・タケキャブ繰り返しての胃の不調で受診した方なら、処方されたこともある薬もあると思われます。同じような作用を持つ薬に H2ブロッカー(ガスターなど)がありますがプロトンポンプ阻害薬はそれよりも強力に胃酸の分泌を止めます。この胃を治すための薬であるこのプロトンポンプ阻害薬の最も重大な副作用が「胃ガン」というのは皮肉なものですが、2019年の研究では、

「長期の服用者は著しく胃ガンのリスクが高まる」ことが示されています。2019年9月の科学メディアより 研究ではこのプロトンポンプ阻害剤を長期間使用すると胃ガンを発症するリスクがほぼ 250%増加することが明らかになった。毎日プロトンポンプ阻害剤を服用していた被験者は他の人たちより4.55倍の胃ガンの発症リスクが見られ3年以上プロトンポンプ阻害剤を服用し続けた場合の発症リスクは 8倍となった。全文を以下に翻訳しています。胃潰瘍や逆流性食道炎に幅広く処方される胃薬「プロトンポンプ阻害剤」は胃ガンのリスクを最大で8倍にまで上昇させる可能性。そして腸内細菌環境を破壊する示唆も

 In Deep 2019年9月30日

プロトンポンプ阻害剤は「胃潰瘍や逆流性食道炎の治療に第一選択」とされていますので処方されるケースは多いでしょうし服用されている方も多いと思いますが望ましい選択としては「服用しない」という選択しかないとは思います。胃の不調は「あらゆる胃薬を飲まなくなったらほぼ完全に治った」というあっけないものでしたがガスターも含めて長く飲んでいましたから。H2ブロッカーやプロトンポンプ阻害剤を長く服用していると、次第に以前よりさらに胃の調子が壊滅的に悪くなっていくことも経験しています。そして今度は

 「プロトンポンプ阻害剤が、インフルエンザなどの感染リスクを高めている」ことが研究で確認されました。論文です

インフルエンザ、肺炎、新型コロナについてプロトンポンプ阻害剤の服用者を調査したものですが正確に書きますと、プロトンポンプ阻害剤の服用者は・インフルエンザと肺炎の感受性が高まる

 ・新型コロナに関しては、感受性は高くならないが重症化率と死亡率が高くなることがわかったというものです。要するに「プロトンポンプ阻害剤を飲むことで感染症にかかりやすくなる」ということになりそうです。「胃酸というのは身体の中の大きな防御機構のひとつ」だと私は思っています。経口で体内に入るさまざまな異物や微生物を含めて胃酸は私たちを守ってくれています。それを「ほぼ完全に出なくしちゃう」わけですので、さまざまな防御を失っても不思議ではない気がします。そういう意味ではプロトンポンプ阻害剤の身体への影響についてもっと広範囲に調査するとさらにいろいろとわかるかもしれません。ずいぶん前の研究ですが2016年にはプロトンポンプ阻害剤の使用が「虚血性脳卒中リスクの上昇と関連している」という研究もありました。プロトンポンプ阻害剤は数多くあるこの世からなくさなければならない薬剤のひとつです。時間をかけて人を死に導く薬剤のひとつです。この研究についてまとめていた医学メディアの記事をご紹介します。

 【プロトンポンプ阻害剤の使用はインフルエンザ、肺炎、COVID-19への感受性リスクの上昇と関連している】プロトンポンプ阻害剤(PPI)の副作用について特に呼吸器感染症に対する潜在的な影響に注目した研究が発表され重大な懸念を引き起こしている。中国の南方医科大学、汕頭大学医科大学、その他の著名な機関によるこの研究はプロトンポンプ阻害剤の使用とインフルエンザ、肺炎、および新型コロナウイルス感染症のリスクとの関連を評価することを目的としていた。プロトンポンプ阻害剤はさまざまな胃疾患に広く処方されているが、その長期的かつ不適切な使用はいくつかの健康への悪影響と関連している。インフルエンザ、肺炎、さらに最近では新型コロナウイルス感染症などの呼吸器感染症に対する感受性の増加におけるそれらの潜在的な役割についてさまざまな医療ニュースの報道で懸念が提起されている。さまざまな国で行われたこれまでのコホート研究では、プロトンポンプ阻害剤の使用と呼吸器感染症との関連性に関してさまざまな結果が示されている。

この研究では38歳から 71歳までの160,923人の参加者を含む英国バイオバンクからのデータを利用してプロトンポンプ阻害剤の定期使用とインフルエンザ、肺炎、新型コロナウイルス感染症のリスクとの関連を調査した。 Cox 比例ハザード回帰分析(生存時間分析のための手法の1つ)と傾向スコアマッチング分析を使用してハザード比と 95%信頼区間を推定した。さらに適応症による混乱を軽減するためにヒスタミン2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)の使用者との比較も行われた。この研究では定期的なプロトンポンプ阻害剤の使用はインフルエンザおよび肺炎の発症リスク増加と関連していることが判明した。ただし新型コロナ感染症のリスクはプロトンポンプ阻害剤の使用と有意な関連はなかった。ただし新型コロナ感染症の重症化リスクと新型コロナによる死亡率が増加したことがわかった。この研究ではいくつかの重要な関連性が明らかになった。・通常のプロトンポンプ阻害剤の使用者は、インフルエンザおよび肺炎 を発症するリスクの増加を示した。・新型コロナウイルス感染症のリスクはプロトンポンプ阻害剤の使用と有意な関連はなかったが重症度と死亡率が上昇した。・ヒスタミン2受容体拮抗薬と直接比較するとプロトンポンプ阻害剤使用者はインフルエンザのリスクが高かったが肺炎や新型コロナ関連の転帰はリスクがなかった。この調査結果は特に呼吸器感染症に関してプロトンポンプ阻害剤の処方について慎重になるべき必要性を強調している。この研究はプロトンポンプ阻害剤をインフルエンザや肺炎と結びつけるこれまでの証拠を裏付けるものである一方新型コロナウイルス感染症との微妙な関係も明らかにしている。結論としてこの研究の広範な分析によりプロトンポンプ阻害剤の定期使用者におけるインフルエンザ、肺炎、および新型コロナウイルス感染症の重症度/死亡率のリスクが高まっていることが確認された。しかしH2ブロッカーの服用者との比較では微妙な状況が明らかになり医療によるプロトンポンプ阻害剤処方に対しての再評価が促されている。

 研究結果は査読誌「eLife」に掲載された。