花粉症で鼻アレルギーが酷い人で、フェキソフェナジンやレボセチリジンでも効果が乏しい人は、古い薬で眠くなるが効果も髙い薬を飲んでいる。例えばクロルフェニラミンOD6㎎である。ところがクロルフェニラミンOD6㎎は、最近、発売中止になってしまったのである。これは採算が合わないという理由らしく、今はクロルフェニラミンのODではない2㎎錠しか購入できない。これはたくさん飲めるが、OD錠ではないので1日4回くらい飲まないと効果が出ない。症状の重い人がクロルフェニラミンを服薬していることもある。

 なぜクロルフェニラミンOD6㎎は採算が合わないで発売中止になっているのに、2㎎錠は生き残っているのかだが、このような古い薬は剤型にかかわらず薬価がほぼ同じだからである。クロルフェニラミンOD6㎎を1錠だけ飲んでいた人がクロルフェニラミン2㎎を1日4錠飲んだとしたら、トータルの1日薬価は4倍になる。これなら採算が合うと言ったところであろう。薬価の決め方が今回の6㎎錠中止をもたらしたとも言える。ODはOrally Disintegratingの略で、OD錠は口腔内崩壊錠の意味になります。2023年7月に販売中止となった抗ヒスタミン剤はd-クロルフェニラミンマレイン酸塩徐放錠6mg「武田テバ」です。今は先発品のポララミン錠2mgもその後発品「武田テバ」同「NIG」も流通が滞っておりますので、皮膚炎に対しては、アタラックスに切り替えた処方せんも見るようになりました。


アタラックス錠(規格10mg/25mg、ヒドロキシジン塩酸塩、分子量447.83)

アタラックス−Pカプセル(規格25mg/50mg、ヒドロキシジンパモ酸塩、分子量763.27)
効能又は効果(ともに)
蕁麻疹、皮膚疾患に伴う瘙痒(湿疹・皮膚炎、皮膚瘙痒症)神経症における不安・緊張・抑うつ


なお、クロルフェラミンは眠い薬だが向精神薬を飲みなれている人にはあまり眠くならない。かなり重症なアレルギーの人で、アレグラ(フェキソフェナジン)やザイザル(レボセチリジン)で全然効かない人はクロルフェニラミンを希望する。特に医療関係者はそうである。そのような人に、クロルフェニラミンは眠くならないですか?と聴くと時間が経てば慣れていくと言う。市販の睡眠改善薬にドリエルという薬があるが、これは抗ヒスタミン薬の眠さの副作用を利用したものである。主な成分はジフェンヒドラミン塩酸塩で、これも時間が経てば慣れる傾向がある。ドリエルとクロルフェニラミンは同じような薬といえる。

ドリエルやクロルフェラミンのような抗ヒスタミン系の薬を睡眠薬として服薬することは推奨されない。新しいタイプの睡眠薬デエビゴ、ベルソムラ、ロゼレム(市販されていない薬)のようなタイプがずっとマシだと思う。デエビゴはレンドルミン(ブロチゾラム)マイスリー(ゾルピデム)などと同じレベルの催眠作用があるようである。しかし、意外に翌日の眠さが出て、そのために続かない人がいる。他のいくらか眠さも出る向精神薬、例えばレクサプロやサインバルタとの併用の人ではそこまで眠さを感じない人が多い。一般に非ベンゾジアゼピン系眠剤とは、マイスリー、アモバン(ゾピクロン)ルネスタ(エスゾピクロン)を言う。これらは薬理学的にベンゾジアゼピン系の薬理作用と似ているがレセプターへの選択性からベンゾジアゼピンの欠点が少なくなっているのである。例えばこれら非ベンゾジアゼピン系眠剤は、ロヒプノール(フルニトラゼパム)ほどの抗不安作用を持たない。それはその部分への作用がかなり制限されているからである。その他、離脱、依存性もベンゾジアゼピン系よりかなり少ない仕様であるが、全くないわけではない。また高齢者で転倒しやすくなるなどの欠点もないわけではないので、根本的に異なる薬理作用を持つ眠剤の創薬が期待されていたのである。デエビゴ、べスソムラ、ロゼレムは上記に比べ、生体の自然な部分を利用した新しいタイプの眠剤である。ロゼレムは従来型の眠剤に比べ効果の点で不足しており、現在、特に精神科ではそこまで多く処方されていないと思う。ベルソムラは結構使われているがマイスリーやレンドルミンなどに比べ効果が若干劣るので、不眠の強い人はどうしても従来型の眠剤を処方せざるを得なかった。令和2年7月6日に発売されたデエビゴ(レンボレキサント)デエビゴは従来の眠剤に比べても催眠作用は遜色がなく変更もしやすくなっている。デエビゴは5㎎から始めても10㎎まで増量できるというのがベルソムラと異なるメリットである。本来デエビゴやベルソムラは新規の患者さんだけを対象に開発されたわけではない。もしいったんベンゾジアゼピン系眠剤を服用し始めたら止められないとすれば、製薬会社がデエビゴを開発する意味すらないであろう。その理由は容易に変更ができないからである。現況簡単に変更できていることを見てもベンゾジアゼピン系眠剤がネット上で語られているほどの大きな離脱の問題がないことを示している。