新しい非定型抗精神病薬、SDA(セロトニン・ドーパミン拮抗薬)のラツーダについて、こちらも陽性症状への効果(幻覚・妄想の改善)以外に、抗うつ効果、陰性症状の改善、認知機能改善などが言われていますが、抗うつ薬の増強はできないのか?

 ➡ ラツーダはセロトニン受容体への効果を考えると、抗うつ薬の増強療法として奏効するのではないかと考えます。しかし、現状ラツーダの適応は統合失調症、双極性障害のうつ状態のみになるため基本的に上記の使用はできません。レキサルティ、ラツーダともドーパミンD2受容体への部分作動薬であるだけでなくセロトニン1A受容体に作用、セロトニン2A受容体をブロックすることで、副作用を少なく陽性症状、陰性症状への効果を高めています。

レキサルティ 

 ・セロトニン1A受容体:部分作動

・セロトニン2A受容体:遮断

・セロトニン2C受容体:遮断 (弱い)

 丸レッドラツーダ

 ・セロトニン1A受容体:部分作動

・セロトニン2A受容体:遮断

・セロトニン7受容体:遮断

 セロトニン1A受容体に作用

 ➡抗うつ薬の効果を高める

 

丸ブルーセロトニン2A受容体をブロック

 ➡セロトニン2A受容体はドパミン放出を抑制する作用があるためブロックすることでドパミンの放出↑ 

 ➡陰性症状の改善、錐体外路症状の軽減

 ・セロトニン2C受容体のブロック

 ➡不安の軽減、食欲増加↑

・セロトニン7受容体

 ➡ブロックすることで抗うつ効果アリとの報告がある。

 うつ病に対する抗うつ薬単剤による効果は30~65%くらいといわれており、1剤の抗うつ薬にて十分量を十分期間、内服しても効果が得られない際は、他の抗うつ薬への薬剤変更が推奨されています。2剤目の抗うつ薬にても同様に十分な効果が出ないときには、治療抵抗性うつ病と呼ばれ、増強療法(augmentation:オーグメンテイション)考慮することになります。増強療法ではクエチアピン、炭酸リチウム、ラモトリギンなど有効性が言われるものは複数あるものの、認可のある薬はしばらくアリピプラゾール(エビリファイ)だけでした。しかし2023年12月ブレクスピプラゾール(レキサルティ)が抗うつ薬の増強療法に用いることが承認されました。

 レキサルティについて、

・ドパミンD2受容体・セロトニン5HT1A受容体に対する部分アゴニスト作用

・セロトニン5HT2A受容体・アドレナリンα1B・α2C受容体に対するアンタゴニスト作用を示す薬剤です。アリピプラゾールよりもセロトニン系およびアドレナリン系に作用し、ドパミンD2受容体への刺激作用を弱めた特性を持つ。また有害事象として、代謝性障害(体重増加など)錐体外路症状(アカシジアなど)のリスクのが低さが評価されている。

 昨年から、抗うつ薬の主剤としてトリンテリックスを使う機会が増えたのですが増強療法としてレキサルティを加えた際の効果が良いと感じています。トリンテリックスはもともと抗うつ効果が高い一方で副作用は少ない薬剤なのですが、吐き気の副作用が出現するケースが時折ありました。この吐き気の緩和と抗うつ効果の増強を感じております。

トリンテリックス+レキサルティは「トリレキ」と略されるなど期待される治療となっています。