良い人、悪い人、勝ち組、負け組……。物事に白黒をはっきりつけるのが好きな人は多いものですが、このような二者択一的な思考には、心の病気につながる危険が潜んでいます。詳しく解説していきます。

 

二者択一的思考の罠にはご注意を!

「最高」の相手が突然「最低」になってしまった時は、怒りを投げつける前に、まずは深呼吸をしてみましょう。物事に白黒をはっきりつけることを、楽しんでしまうことはないですか? 例えば、良い人・悪い人。いけてる・いけてない。勝ち組・負け組。私たちは色々な物事をつい2つに分けてしまいがちです。もっとも、自分の判断と他人の判断は必ずしも一致しませんが、自分では自分はいけてると思っていても、他人からは改善の余地があると思われているかも知れません……。

 こうした認識の違いはストレスの原因になりますが、二者択一的思考には心の病気につながるような危険性もあります。今回は、二者択一的思考にはどのような注意点が潜んでいるかを述べていきます。

 

二者択一的思考が心を不安定にする時

物事を良い悪いと言ったように、2つにきっぱり分ける事自体は、特に悪い事だとは思われていないと思いますが、二者択一的な思考に捉われてしまうと、日常生活、特に人間関係で問題が生じる事があります。例えば、仕事熱心でやさしい彼で「超イケテル!」と満足していたのに、食事の後片付けを手伝わず、ソファでごろりとテレビを見ながら鼻をほじっている彼を見て「何なのこの人は。最低!」と怒りがこみ上げて来て思わず床に皿を投げつけてしまったなど……。振り子の針が右から左へと突然変わるように、彼への評価が「超イケテル」から「最低」になり、衝動的に生じる怒り。後で振り返るとお皿を投げつけるほどの事でもなかったと自己嫌悪に陥ってしまう……。

また、二者択一的思考が自分自身に向けられた場合例えば「自分はハンサムでバリバリ働いていて、勝ち組!」と高揚した気分で週末の街を歩いていた人が、楽しそうな様子のカップルを見て「週末も働かなくてはいけないって、負け組じゃん」と、晴天の空に厚い雲がどんどん立ち込めるように気分が急低下してしまう……。こうした事が日常的に繰り返され、生活に大きな支障が生じている場合は、心の病気の可能性もあります。

 

二者択一的思考が特徴的な境界性人格障害

二者択一的思考が目立ちやすく、心の不安定さが特徴的な心の病気として、境界性人格障害があります。境界性人格障害の「境界」とはその症状が心の病気の大きなカテゴリーである、気分障害、神経症の症状や思考障害を含んでいて、こうした心の病気の「境界」と言う事を意味していますが、境界性人格障害に、うつ病など他の心の病気を合併する事も少なくありません。境界性人格障害では、小児期にトラウマの経験が多い事も知られています。若い女性に多く人口の約2%程度ですが、日常生活にさほど問題がない「境界性人格」に親和的な気質の人はかなりいらっしゃるのではないでしょうか。以下に「境界性人格」的な特徴をまとめてみます。

  • 二者択一的思考を取りやすい
  • 自分に対するイメージが混乱している
  • 簡単に友人と絶交してしまう
  • 衝動的になりやすい
  • うまくいった時は気分が高揚しやすいが、失敗した時、落胆が大きい
  • 冴えない気持ちの時が多い

思い当たるところはありませんか? もしも上記のような傾向を自覚していて、日常生活に支障が大きな場合、例えば心の緊張が高まった時、衝動的な行動をしてしまい、後でその事を後悔するといった事が続いているような場合は、是非、精神科・神経科での相談も考慮してみてください。