固定残業代(又はみなし残業代)とは、時間外労働手当を予め定めた時間数の手当を毎月固定の手当として支給する制度です。かつては「3万円の固定残業代を支給しているから残業代は支給しない。」といった明らかに法令違反となる運用が見受けられ、そこから「固定残業代のある会社はブラック企業」といった風潮がありましたが、固定残業代自体が法令違反となる訳ではなく、“適切な運用”をしていないことが法令違反となる手当ですので運用には下記のような注意が必要です。

 注意点の一つは、就業規則(賃金規程)や労働条件通知書(労働契約書)への具体的な時間数や計算等の明記です。“基本給30万円に45時間分の時間外手当を含む”という記載は基本給30万円のうち、いくらが固定残業代なのかが不明確であるため、固定残業代として認められません。固定残業代は具体的な金額と具体的な時間外労働時間の明示が必要となります。もう一つの注意点は、時間外手当を計算し固定残業代の手当額を超えた場合、その超えた分の時間外手当は、別途支給しなければなりません。45時間の時間外手当の場合

“45時間を超えた時間数に対する計算”ではないことに注意が必要です。最後の注意点は、固定残業時間数です。固定残業代80時間分等、そもそも36協定違反に該当する可能性のある時間数の場合、公序良俗違反として否認されることがあります。(東京高裁平成30年10月4日)


このように固定残業代の導入には様々な制約がありますが、導入している企業は2010年7.7%から2022年には23.3%と約3倍に増えており、需要は高まっていると言えます。

(出典:労務行政研究所「人事労務諸制度の実施状況【前編】(労政時報4038号/2022.7.8)」)さすがブラック企業9割なだけありますよね。いかに労基が機能してないかよく分かりますよね?