「抹茶」とその成分エピガロカテキンガレート(EGCG)で,肺炎球菌(耐性菌を含む)を殺菌できること、その主要毒素の細胞毒性を阻害できること、が明らかになったようです。新潟大学プレスリリース(2021.12.21) リンク より、一部引用。
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抹茶に肺炎球菌の殺菌作用と毒素阻害作用-薬剤耐性菌にも効果-

新潟大学大学院医歯学総合研究科微生物感染症学分野の笹川花梨歯科医師(大学院生)と土門久哲 (ひさのり) 准教授・寺尾豊教授らは,抹茶とその成分エピガロカテキンガレート(EGCG)で,肺炎球菌(耐性菌を含む)を殺菌できること,その主要毒素の細胞毒性を阻害できることを明らかにしました。また,歯学部生の坂上莉奈さんも,歯学研究演習授業の一環として研究に参画し重要な解析を担当しました。本研究成果は,国際科学誌 Antibiotics に掲載され,2021 年 12 月 18 日(日本時間)に電子版が公開されました。

【本研究成果のポイント】

・新型コロナウイルス感染症を除いても,肺炎による毎年の国内死者は 10 万人以上。
・その一因として,抗生物質が効きにくい薬剤耐性肺炎球菌の増加があげられる。
・抹茶は,飲用よりも低濃度で薬剤耐性肺炎球菌を含む肺炎球菌株に対して殺菌作用を示し,さらに,その主要毒素 PLY が毒力発揮に必要な重合体形成を阻害し,細胞毒性も妨げた。
・上記の抹茶効果は,主に EGCG が担い,EGCG は煎茶よりも抹茶に約 5 倍多く含まれるカテキン成分であった。

Ⅰ.研究の背景

新型コロナウイルス感染症による肺炎で,国内死者は約 2 年で 1 万 8 千人を超えています。しかし,新型コロナウイルスの出現以前から,肺炎は日本人の死因の第 3 位であり,昨年度は 1 年で 13 万人以上が亡くなりました(誤嚥性肺炎を含む)。

主な肺炎の原因細菌は肺炎球菌ですが,抗生物質の頻用が一因となり,年々,抗生物質が効きにくい耐性菌が増加しています。抗生物質は細菌感染症の特効薬であるため,耐性菌の増加は肺炎の治療において大きな障害となってきています。

新潟大学大学院医歯学総合研究科微生物感染症学分野では,肺炎の感染動向や重症化メカニズム,およびその予防・治療法について研究しています。その中で,新潟市内で分離された肺炎球菌のうち,80%以上はマクロライド系抗生物質が奏効しない耐性菌であることを明らかにしています 注 1 
リンク 。

また,同菌の PLY 毒素が肺炎重症化に重要な役割を果たすことを証明しています 注 2。そこで本研究では,飲用濃度の抹茶で肺炎球菌(耐性菌を含む)を殺菌できるのか,さらには PLY 毒素が私達の細胞を傷害する効果を阻害し,重症化予防に繋がる可能性を有するのかを解析しました。

Ⅱ.研究の概要と成果

2014~2017 年に,新潟市の中耳炎患者から分離された 2,608 株の肺炎球菌のうち,82%がマクロライド系抗生物質の効かない耐性菌と判明しました。これまでは,大規模病院の入院患者らに耐性菌が増加していると理解されていました。

本研究では,市中において日常生活を過ごす人達にも,マクロライド系抗生物質が効かない耐性肺炎球菌が広く流布していることを示しました。さらに,38%はペニシリン耐性菌であること,そして両方の抗生物質が効かない菌やニューキノロン系抗生物質にも耐性な多剤耐性菌までが市中に分布していることを報告しました。