かつては、精神疾患患者は人目につかないところに隔離することも行われていた1950年に精神衛生法が施行されるまではそんな患者にとっては厳しい状況が当たり前だった。しかも精神衛生法でも一定の条件下での監視は認められていたためその後も多くの患者が病院での非人道的な環境に耐えなければならなかったといわれる

 ’54年に薬物療法が導入される以前は、催眠療法や電気を脳に流したり、インシュリンやカルジアゾールなどの薬物を用いる療法が多かったのだ。「精神科病棟といえば人里離れた山奥にあって病室の窓には鉄格子。入院患者は薬を打たれたり拘束されたりする」

現在は「本人に危険が及ぶ場合」や「自殺企図または自傷行為が切迫している場合」などでしか許されず、さらに適用のルールが細かく決められている。以前とは異なるのだ。「身体的拘束」も同じで、法律に基づき、開放的な環境では生命を危険にさらす可能性のある患者を守るためのものであり、基準が定められている。現在は「本人に危険が及ぶ場合」や「自殺企図または自傷行為が切迫している場合」などでしか許されず、さらに適用のルールが細かく決められている。以前とは異なるのだ。

とはいえいくら病院側が細心の注意を払い患者の安全のために拘束という手段をとっていたとしても患者の感覚は違う。錦山さんには入院時、身体拘束をされていないが、ベルトをきつく締められた経験を苦しげに語る患者と話したことがあるという

「30代の男性患者さんだったのですが、最初、ベルトがゆるくて暴れたらはずれたため、きつく締められたんだそうです。動きが制限されてイヤだったし、拘束中はトイレをおむつですることにするのに慣れなかったので、不快だったと言っていました。こういった体験が、今も根強く残る『精神科病棟は怖い』の理由かもしれません」