高校時代の彼女 | 錦鯉春助の冒険

錦鯉春助の冒険

日常の恐ろしき風景

 中学・高校と僕は部活をやらなかった。スポーツは好きだし、やればそれなりに自信はあった


 事実、中学の時に野球部から勧誘があったが断わった


 今、考えたら昭和の部活だぞ。部長や監督はふんぞり返って威張り平気で生徒を殴る。上級生は下級生を平気で殴る


 当時はそれが当たり前だと思われていたが、僕は理不尽だと思っていたから部活には近寄らない


 僕は殴られたら倍にして返さないと気がすまぬ性格だ。相手が上級生でも監督でも


 それに高校生になるとナンパや(女子高の文化祭に行けば入れ食いみたいに釣れる)名画座やストリップ小屋に通うため、部活の村社会に付き合う暇はない


 高校時代は人生の食べ頃だ。放課後になると腹が減るから同級生と寄り道する。その一番がお好み焼き屋で次がパン屋だ


 当時のお好み焼き屋はチェーン店ではなく、お婆さんが白い割烹着を着た店が多かった


 大阪のお好み焼き屋は客が自分のお好み焼きを自分で焼く。それに決して箸では食べない


 鉄板の傍らには読み古した平凡や明星などの週刊誌が置いてある。必ずカラーページが破り取られていた


 恐らくそのページは女性タレントの水着姿であろう。多分夜の友として必要なのだろう。当時はAVなどない時代だ


 パン屋で人気があったのが焼そばパンや魚肉ソーセージのホットドックだがもうひとつあった


 丸くて平たいパンの中央に切込みが入って、白いバタークリームが詰まり真ん中に缶詰の真赤なサクランボが乗っている


 男子高校生はこれを○め○パンと呼んだ。似てるからと。しかし本物を見た高校生は殆どいなかったのだが(笑)


 ある日、クラスの学級委員の女の子と一緒に帰りパン屋に寄った。僕は遂、言ってしまった


「Bちゃん、○め○パン食べるか」


 言ってからしまったと思った。その場が凍りついた


 彼女は真赤な顔で僕を睨んだ。瞳が潤んでいた


「錦鯉くん、ずっとそんな事を考えてるの?」


「考えてるよ。特に委員長のをね」


「アホ!錦鯉くん嫌い!」


 この娘が高校時代の僕の彼女になる。勿論あのパンは独り占めで食べた