Beatles | 錦鯉春助の冒険

錦鯉春助の冒険

日常の恐ろしき風景

 30歳を過ぎた頃から耳鳴りが激しくなった。脳波まで調べたが原因が分からない。血圧だって正常だし。


 だからほったらかしてきた。だいぶん良くなったし慣れたのも確かだ


 昼間は気にもならないが寝る時の静寂は辛いから小さい音量でラジオをつけて眠る。


 覚醒したのは深夜の2時だ。ラジオからNHKのラジオ深夜便が流れていてBeatlesの特集が始まった。


 流れたのは1963年に発表された2枚目のアルバム《ウィズ・ザ・ビートルズ》だ。


 このアルバム発売から数ヶ月先に、抱きしめたい。シー・ラブズ・ユー。キャント・バイ・ミー・ラブ。のシングル盤を発表して世界中の若者に驚愕と熱狂をもたらす事になる。


 Beatlesのアルバムは1965年以後の➀ラバソール➁サージャント・ペッパー③アビーロード④マジカル・ミステリーツアー⑤レット・イット・ビー。


 この5枚はロックンロールの革命だ。ラバソールの中には村上春樹の小説のタイトルになった、ノルウェーの森やドライブ・マイ・カーがある。


 この5枚のアルバムとモーツァルトとベートーヴェンとバッハは人類共通の宝だ。


 1965年当時、ビートルズのメンバーはツアーコンサートに疑問を持ち始める。ニューヨークメッツの本拠地、シェアスタジアムには5万6千の観衆で埋まっていた。


 当時の機材の能力なら大歓声の中で歌は聞こえない。第一、歌ってるビートルズのメンバーに自分の声は聞こえない。


 彼等は理解した。観衆は歌を聴きに来たのではない。ビートルズだから来たのだ。つまり我々はパンダと同じだと。


 1966年の日本ツアーで神聖な武道館を使わせるなと右翼から脅迫されフィリピンではイメルダ夫人の晩餐会を断わったとバッシングを受けアメリカは不買運動が始まる。


Beatlesは完全にツアーを辞めスタジオに籠もる。1967年にコンサートでは演奏不可能の1枚のアルバムを発表する。それがサージャント・ペッパーズ・ロンリー・ハーツクラブ・バンドだ。


 だからまだ2枚目のアルバムは幼い。オリジナル半分とカヴァー曲が半分の割合だ。


 オリジナルは曲調が平板で何処か全部のメロディラインが似ている。そして基調がリズム&ブルースだ。


 カヴァー曲の方はスモーキ・ロビンソンやチャク・ベリーと楽しいが、プリーズ・ミスター・ポストマンもカヴァーだと深夜便のアナウンサーから聞きびっくりした。僕はずっとビートルズのオリジナルと思っていた。


 ずっと以前ガールフレンドの着メロがカーペンターズのプリーズ・ミスター・ポストマンだった。


わたしカーペンターズか大好きと彼女が言った。


だがその曲はビートルズだよと僕は自慢げに言った。


あら、そうなの?


 僕の間違いです。