あれから人を恨んだり憎んだりするのはやめた。
悲しい事が起きてしまうことも嫌だったし、
自分がそのぶんダウンしねこむのも嫌だった。
相手に飛ばした恨みの分だけ、
自分にもそれなりのダメージがあるらしかった。
大学を出てから、あたしは何度も転職をした。
そのたびに夢を見た。
新しい職場で働いている自分、
新しい先輩の顔、
新しい会社の名前…などなど。
もちろん夢を見た時はなんのことかわからないけど、
実際に夢で見たシーンが現実になると思い出した。
最初は「あぁ、コレの事かぁ…」と思っていたが、
最近は「あ、そろそろ仕事決まるっぽいな」と思うようになる。
あたしを溺愛してくれたじいちゃんが亡くなった時も同じだった。
かけつける時に電車にあと少しのところで乗り遅れ、
現実でもまったく同じ状況になった。
じいちゃんはその後たびたび夢に出てきて、
一緒に庭に水をやったりドライブしたりしている。
だから、じいちゃんが死んだ気がしない。
最近じいちゃんが出てきて言った。
じ:「なに、俺は死んじゃったんかい?」
あたし:「そうだよ。」
じ:「あぁ、なんだ、そっかぃ。」
そういって、ねていた布団に入りなおしまたねていた。
突然倒れて急死したものだから無理もない。
じいちゃんは2年経つ今まで自分が死んだ事に気付かなかったのかもしれない。
あたしを悲しませた男はかならず不運に見舞われた。
就職がうまくいかず、それが災いして彼女に逃げられ独身。
精神を病み、職を失いひきこもり。
幸せを祈れる別れになった人には幸運が訪れている。
難関の試験に成功し、仕事も順調で超絶美女の彼女と長い付き合い。
震災の被害をまぬがれ、夢につながる仕事にめぐり会えた。
そしてあたしはまた夢を見る。
自分が不倫をする夢を。