梅雨がはじまった頃から、
あきらかに食欲がない。
戻りつつあった体重がまた減っていた。
ただの夏バテだと思いたかった。
再発だなんて思いたくなかった。
原因はほかでもない仕事。
薄々感じていたことは、
信じたくなかったけど事実だった。
連休は福岡の実家で楽しめた。
親には元気で羽振りのよさを見せつけ、
5万円をぽんと渡した。
たしかに大金だけど、
それくらいで苦労してるなんて思われたくなかった。
連休明けの朝。
横浜に戻ってからずっとする頭痛。
吐き気。
飛行機が墜落すればいいのに。
電車が脱線すればいいのに。
事故にあって死にたいと本気で思った。
やっと行った会社でとどめをさされ、
仕事終わりに精神科へ向かう。
『しばらく休んだほうがいい』
倍になった薬。
━これで治るの?━
彼とオークラで食事をしたあと、
電車に飛び込みたい気になった。
でも勇気はなかった。
泣きながら家に帰った。
何度も謝る彼に、
あたしは人目も憚らずただ泣くことしかできなかった。
家に帰り、自棄になって同棲解消を申し出た。
彼も同意した。
『今までありがとう。』
『うん。今までありがとう。』
あたしはキッチンへ行き、
よく切れる包丁を右手に握った。
━どこに刺せば確実に死ねるか━
刃先を上にして、
一番力の入れやすい腹に包丁を突き立てた。
涙があふれた。
━なんでこんなことになっちゃったんだろう━
『あやちゃん!それだけはやめて!それだけはやめて!』
血相を変えて、という言葉そのものといった表情で
彼があたしの包丁を持った手を握った。
『やめてよ!もう生きてたってしょうがないの!離してよ!』
あたしの手から包丁が放され、しまわれた。
まったく抵抗がきかない。
男の人の力ってすごいんだなとこんなときに実感する。
『ごめん。悪かったよ。俺が悪かったから。ごめん。ごめんね。』
涙を流しながらあたしの肩を抱く彼の横で、
あたしはしゃっくりをするほど声をあげて泣いた。
━あたしは自分で死ぬこともできない━
あきらかに食欲がない。
戻りつつあった体重がまた減っていた。
ただの夏バテだと思いたかった。
再発だなんて思いたくなかった。
原因はほかでもない仕事。
薄々感じていたことは、
信じたくなかったけど事実だった。
連休は福岡の実家で楽しめた。
親には元気で羽振りのよさを見せつけ、
5万円をぽんと渡した。
たしかに大金だけど、
それくらいで苦労してるなんて思われたくなかった。
連休明けの朝。
横浜に戻ってからずっとする頭痛。
吐き気。
飛行機が墜落すればいいのに。
電車が脱線すればいいのに。
事故にあって死にたいと本気で思った。
やっと行った会社でとどめをさされ、
仕事終わりに精神科へ向かう。
『しばらく休んだほうがいい』
倍になった薬。
━これで治るの?━
彼とオークラで食事をしたあと、
電車に飛び込みたい気になった。
でも勇気はなかった。
泣きながら家に帰った。
何度も謝る彼に、
あたしは人目も憚らずただ泣くことしかできなかった。
家に帰り、自棄になって同棲解消を申し出た。
彼も同意した。
『今までありがとう。』
『うん。今までありがとう。』
あたしはキッチンへ行き、
よく切れる包丁を右手に握った。
━どこに刺せば確実に死ねるか━
刃先を上にして、
一番力の入れやすい腹に包丁を突き立てた。
涙があふれた。
━なんでこんなことになっちゃったんだろう━
『あやちゃん!それだけはやめて!それだけはやめて!』
血相を変えて、という言葉そのものといった表情で
彼があたしの包丁を持った手を握った。
『やめてよ!もう生きてたってしょうがないの!離してよ!』
あたしの手から包丁が放され、しまわれた。
まったく抵抗がきかない。
男の人の力ってすごいんだなとこんなときに実感する。
『ごめん。悪かったよ。俺が悪かったから。ごめん。ごめんね。』
涙を流しながらあたしの肩を抱く彼の横で、
あたしはしゃっくりをするほど声をあげて泣いた。
━あたしは自分で死ぬこともできない━