【初出勤】


19時。
お店に向かった。

夜のお仕事ははじめて。
こんな時間から働くこともはじめてだった。


担当に会いに行くときとは違った緊張感。


もしキャバなら、
ヘアメイクやらドレスやら必要なのだろう。


でも、あたしが働くのはキャバじゃない。



『おはようございますっ!』

『あっ、きたきたぁ!この子がアヤちゃんだよぉ~』


店につくと、
レナさんがお客さん2人を接客していた。

カウンターの中に入る。


『今ね、ちょうどアヤちゃんの話してたんだよぉ。
今日から新しい子が来るって。』


いきなり初めての接客。

『はじめまして。アヤです。』


普通のサラリーマン風のお客さんは、にこやかに迎えてくれた。

目の前のボトルを指差して言った。


『君がアヤちゃんかぁ。よろしくね。僕は河下。アヤちゃんも1杯どう?』


『…?はい!』


(1杯どうって何??どういう意味だろ…わかんない!)


混乱して黙っているうちに、
レナさんが手際よく水割りを作ってあたしに手渡してくれた。

このときやっとわかった。


河下さんは、
自分のボトルからあたしにドリンクをご馳走してくれたのだ。


急いで笑顔でお礼を言った。


『いただきます!』

『じゃ、4人揃ったところでかんぱーい☆』


レナさんはビールをもらっていた。


河下さんたちが帰ると、
ママが顔を出しに来てくれた。


『どう?続けていけそう?』


あたしは笑顔で答えた。

『はい!』


しばらくすると、
50代の男性が馴れ馴れしくママの隣に座った。


レナさんは素早くボトルを出し水割りを作った。
この人がオーナーだった。

ママが紹介してくれた。


『この子、アヤちゃん。今日からの新人ちゃんだよ。』

『あ、そう。よろしく。』


少し話した後、
ママとオーナーは足早に店を後にした。



2人が内縁の仲だとはまだ知らなかった。