【はじめての街】



今夜ははじめてその街へ乗り込む。


その後は担当ホストのKのいる店に行くつもりだった。



いつもより濃いメイクをして、
終電で新宿に向かう。


東口から迷わず歌舞伎町へ。


次々に声をかけてくる、怪しげなスカウト。

キャッチに勤しむホスト。

どこからともなく近づいてきて、


『ねぇ、君いくら?』
『お小遣い欲しくない?』


などとしつこくつきまとう男。

足早に歩く細くて派手なお姉さん。

酔っ払いのサラリーマン。


うんざりするほど人が沢山いる。



新宿歌舞伎町。
世界最大の歓楽街。

日付が変わるころ、
この街は本当の姿になる。



区役所通りを1本外れ、
花園神社に隣接したある通り。


右手にストリップ劇場が見えたら、
そこが入り口。



歌舞伎町でも繁華街から少し離れた、
昭和を感じさせる飲食店街。


わずかな敷地の小さな飲食店が軒を連ねる。



1950年代。
青線という俗称をもち、
ここは都内有数の売春街だった。

この街に、健全といえる人間ははたしてどれだけいるだろう。


どこも閉まっている扉。

あたしはその中の一軒の店のドアを開けた。