しばらくして、Kは区役所通りのB店に移籍した。


毎日連絡をくれたが、あたしは会いに行く気にはならなかった。


前の店では幹部でオラオラだったのに、B店では下っ端でペコペコしているKを見たくなかった。



あたしはこの頃からひとりで歌舞伎町をふらつくようになり、Kとは口喧嘩をするようになった。

『どうせあたしは客なんでしょ』


『営業なら連絡しないでよ』


あたしは思ったことを何でも言った。
Kはそのたびに必ず笑って電話を切れるようにしてくれた。


『長期の育て』か『細客営業』か。


今ならわかる。



その年の夏休み、あたしはひとりでイギリスにいった。


ツアーではなく、出国から帰国まですべて1人ですることにした。



前半はホームステイ、後半はフラットを借りた。


帰国して1ヶ月、Kとの連絡を絶った。


このまま関係を切ろうと思ってのことだった。


あたしはまた、前と同じやり方で好きな人を忘れようとした。


そんな貧弱な意志は、1ヶ月後のKからの電話ですぐに崩れてしまう。


一度マンネリ化した気持ちはすでに充分回復していた。
放置していた分ネタもあがってくる。



Kとはまた、何もなかったように毎日連絡した。

新鮮さを取り戻すために一定期間距離をおく営業だったことも、今のあたしならわかる。




それから1ヶ月後、あたしはKのいる店に行った。