Kが働いていたC店をやめることを知ったのは、1ヶ月後のことだった。



他店で1からやり直したいという理由も、本人の口から直接聞いた。




そのときはまったくそんなつもりはなかった。




しかし、そのラストの日に、あたしはKに会いに行ったのだ。




深夜の歌舞伎町は豪雨だった。



オープンより2時間前にKと会う。



誰かを指名して同伴までしたのはこれがはじめてだった。




あたしはこの時まだお酒が飲めなかった。



バーに入っても、お酒のオーダーさえしなかった。




時間がきてC店に入ると、前に指名客の座っていた卓が用意されていた。



卓が埋まるにつれて、Kはほとんど他卓についていた。



あたしの卓には新人のヘルプが長くついた。



こっちが気をつかわなければならない人といるのがいかに辛いかを知った。




会話ができないほど店内に響くサイケ、

延々と流れるパラパラのDVD。




あたしはつまらなかった。



それでも送りのときにはKの計らいで機嫌を直した。




ラストイベントは10時間後に終わった。





あたしはこのときすでにKに心を奪われていた。



毎日の連絡も生活に欠かせないものになっていたし、

他客とは特別にしてほしかった。




店でボトルを入れた卓に、Kが長くついているのがうらやましいとさえ思った。




Kに特別にしてもらうために、何をすればいいか。




こうしてあたしは見事にはまっていった。