http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070521-00000008-mai-soci
大阪府吹田市の「エキスポランド」の死亡事故を受け、高速コースターを建築基準法で規制することの是非が議論されている。国土交通省は「定期検査の項目の法令上の位置づけがあいまいな部分があった」として、探傷検査の義務付けなど同法の規制強化を検討。一方で低速コースターを運行する遊園地からは「コストを考えると、エキスポの『絶叫系』と同じ規制を課すのはいかがなものか」とする声もある。法整備を担当した同省OBは「ハード優先の建築基準法だけでは限界がある」と指摘する。
ジェットコースターなどの遊具が建築基準法で規制されるようになったのは、同法制定9年後の1959年から。高度経済成長期に入り、百貨店屋上などの遊戯施設で事故が目立ち始めたことがきっかけという。建設省(現・国交省)、運輸省(同)、通商産業省(現・経済産業省)、労働省(現・厚生労働省)などが協議したが、「遊戯施設は分かりにくい」と互いに敬遠し、結局建設省の所管となった。
建築基準法では遊戯施設は想定外だったため、当時、建設省建築指導課員だった前川喜寛さん(87)らが東京都内の遊園地を回り法整備を検討。運行管理が重要と判断し「遊戯施設法」制定なども考えたが、結局「遊具にはさまざまな形があるため、建築基準法で施設の安全性を規制し、管理面は運用で充実させようとした」という。同省はその後、検査資格制度を創設するなど政令や通達などで規制を強化した。
しかし遊戯施設での事故は続いた。財団法人「日本建築設備・昇降機センター」(東京都港区)によると、77~06年に全国のジェットコースターやブランコなどの遊具で26人が死亡し、255人が負傷した。しかし、情報は共有されないまま、今回の事故が起きた。建築指導課長も務めた前川さんは退職後の91年、関連法人の機関誌に寄稿した論文で「運行管理を主体とした遊戯施設単独の法整備が必要」と指摘した。だが、その後も国は具体的な法整備について検討していなかった。
事故後の衆院国土交通委員会では「時速100キロを超えるようなものが建築基準法で言う工作物という位置づけでいいのか」「(定期検査の報告を受ける)自治体の担当者がどれだけ理解しているのか疑問」という意見も出た。これに対して国交省は「今すぐにできることは、法令上あやふやな検査項目を明確にすること」と説明する。
前川さんは「法律はあくまで最低基準。管理責任を負う事業者の経営責任を明確にするために、単独の法制度の充実が必要ではないか」と指摘している。【長谷川豊】