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◇歴史的建造物、保存の難しさ浮き彫り--保有財団法人、財政的制約も重なる
 藤沢市の昭和初期の建造物「旧モーガン邸」が12日ほぼ全焼した火災で、同邸の防火対策が先送りされていたことが分かった。国などの文化財に指定されていなかったため、自動火災報知設備の設置などは義務づけられていなかったうえ、保有する財団法人「日本ナショナルトラスト」(東京都文京区)の財政的な制約もあったためだ。歴史的建造物保存の難しさが改めて浮き彫りになった形だ。【山田研、写真も】
 旧モーガン邸は旧丸ビルなどを設計した米国人建築家J・H・モーガンの邸宅。モーガンの死後、持ち主が次々と変わり、住宅地として開発される恐れが浮上したため、財団や藤沢市が04~05年にかけて土地・建物を取得した。
 財団によると、取得時に防火・防犯設備の設置を検討したものの、ハクビシンが天井裏にすみ着いていたため、機械による不審者侵入の確認は容易でないと判断。今後の活用方法や修復の進め方を決めたうえ、費用をかけて本格的な対策を取る考えだった。今年4月、「不審者が敷地内に入った形跡がある」として、ロープを張るなどをした程度だったという。
 国や自治体から文化財として指定を受けた建造物の場合、消防法施行令により、原則としてすべてに自動火災報知設備を設置することなどが求められる。しかし、同邸はこうした指定は受けていなかった。
 財団は旧モーガン邸のほかに▽安田楠雄邸庭園(東京都文京区、都指定名勝)▽「駒井家住宅」(京都市、市指定文化財)など建造物4軒を保有している。安田邸は建物修復の際、熱や煙を感知すると119番につながる装置を付けたが、旧モーガン邸の火災が侵入者による疑いがあることを受け、無人警備設備を早急に導入することを決めた。
 財団は一般からの募金や会費で自然遺産や文化遺産の保存・活用を進めており、旧モーガン邸取得事業の支出約2400万円を含む財団の05年度特別会計の決算では、約5700万円の当期収入のうち約1300万円が「募金収入」だった。事務局は「対策を取るにも財政的裏付けが必要」と説明している。
 ◇市民団体「旧モーガン邸を守る会」の徳重淳子さんの話
 日本ナショナルトラストや藤沢市とともに、建物の修復、再生に向け歩いていきたい。(焼け跡を見た)専門家からも修復可能と言われ、勇気づけられている。価値のある建物なのだから文化財としての指定も目指している。6月3日午後2時に市労働会館(同市本町1)で募金コンサートを開き、賛同を呼びかける予定だ。