http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070503-00000001-agara-l30
田辺市新庄町の県立情報交流センター「ビッグ・ユー」が2003年の建設中に地盤沈下した問題で、県は2日、原因調査を依頼していた研究機関の結果を公表した。原因は「雨水の浸入による特殊な現象」で、03年度に県が調査した結果と同じになった。県は基本設計業務をした業者(大阪市)の過失ではないという従来の方針をあらためて示した。
県発注工事をめぐる汚職事件で、同センター設計の業者選定でも談合疑惑が強まり、県議会の建設委員会(尾崎太郎委員長、7人)が昨年12月議会で、地盤沈下の原因について再調査するよう県に要請していた。
県が依頼していた、独立行政法人建築研究所(茨城県つくば市)の結果報告書によると、沈下は盛土部分で発生。沈下量は建築基礎部分で最大22・5センチ、周辺地盤で最大27・8センチ。基礎工事の掘削により表層地盤を取り除いたため、雨水の浸入で盛土部分の泥岩が細かい粒子となり、土砂容量が減少する「スレーキング」が発生し、沈下したと考えられるという。同研究所は「スレーキングは特殊な現象で、一般の構造設計者があまり理解していないのが現状である」などと結論づけた。
この調査を受け、県は従来通り「沈下は予測できなかった」として業者の責任を問わない見解を示した。県議会建設委員会の尾崎委員長は「疑いだしたらキリがない。第三者機関が調査した結果だから認識せざるを得ない。しかし、入札の疑惑は別の問題」と話した。
ビッグ・ユーは2002年8月に着工。03年2月に工事施工業者から地盤沈下の報告があり、県は原因調査を東京都内のコンサルタント会社に依頼。スレーキングが沈下の主たる原因であるとの報告を受けた。03年9月議会で県は4億3000万円の補正で追加工事を行った。
しかし、昨年秋、県工事をめぐる談合汚職が浮上。逮捕された前知事の木村良樹被告(55)=談合、収賄罪で公判中=らの公判で、木村被告がビッグ・ユーの設計業務を特定業者に受注させるよう指示していたことが明らかになった。
県議会建設委員会では、設計業務の入札についても業務を受託した業者から事情聴取するように要請していたが、県土整備部は事情聴取をしていないという。尾崎委員長は「県は業者を呼んで事情を聴く義務がある」と話している。
【建設中に地盤沈下があった県立情報交流センター「ビッグ・ユー」(田辺市新庄町で)】