http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070329-00000291-mailo-l32


今年の春は早い。あっという間に梅は盛りを過ぎ、咲き誇る菜の花が町並み保存地区(大田市大森町)を蛇行する銀山川を黄色に染めている。「梅は咲いたか桜はまだかいな」(江戸端唄)――人の心より先に、気の早い桜が川のほとりで春のたすきをつないでいた。
 町並みの表玄関に当たる大森代官所の跡(約2658平方メートル)は1969年、国の史跡に指定された。現在も残る表門と南北の門長屋の延長は約33メートル。表門と南門長屋は文化12(1815)年の建立と推定されている。
 高さ約5メートルの表門をくぐると、今月21日にリニューアルオープンしたばかりの石見銀山資料館が待っている。木造平屋の建物は代官所跡地に1902年に建築された旧邇摩郡役所だ。解体決定を惜しむ同町有志が譲り受け、76年から民間運営を始めた。理事長の中村俊郎さん(59)は「住民が立ち上がり、自らの力と資本で歴史と文化を守り伝えていく。まさに、住民トラスト運動のはしりだったと思います」と胸を張る。
 代官所の表門前では、数本の桜の古木がリニューアルを祝うかのようにピンクのベールをまとい始めた。芭蕉の一句を借りよう。
 「さまざまのこと思い出す桜かな」【船津健一】