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◇山形市、活用方法の検討へ
 昭和初期に建てられ、70年以上の歴史を持つ山形市城北町2の市立第七小校舎が来年、老朽化のため解体される。第二次世界大戦で空襲を免れた同市には、戦前からの建築物が少なくないが、近年は取り壊しが相次ぎ、惜しむ声が上がっている。【釣田祐喜】
 「周りに高い建物がなく、春には霞城公園の桜の花がとてもきれいだった」「用務員室で夜9時ごろまで残らせてもらい、女学校の受験勉強に励んだ」。2月、同小校舎に親子連れや建築愛好家、主婦ら約40人が集まった。解体前に記憶にとどめる見学会を開き、小学生時代の記憶や建物への思いを語り合った。
 校舎は鉄筋コンクリート3階建て。関東大震災後の設計で、災害時に児童が避難しやすいように1~3階をつなぐ幅約3メートルのスロープがある。当時流行だった曲線のデザインを取り入れた塔状の部分もある。
 見学会を主催した同市千歳の設計士、田苗重樹さん(51)は「当時、コンクリートの建築は珍しく、大変な費用がかかったはず。震災後、子供には安全に育ってほしいと大人が望んだ気持ちが伝わってくる」と話す。
 現在は校舎の老朽化が激しい。04年の調査で耐震補強には多額の費用がかかることが分かり、解体方針が決まった。市教委管理課は「新校舎を建てるためには敷地が足りず、取り壊す他に方法がなかった」と説明する。
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 山形市内の古い建物を広く知ってもらおうと活動する「山形歴史たてもの研究会」(結城玲子会長)は01年、歴史的な建築物をまとめた「やまがたレトロ館絵地図」を作った。江戸末期から昭和にかけて建てられ、手作業の職人技が生かされた小学校校舎や教会、民家など24カ所を選び、イラスト付きで紹介した。
 絵地図の作製から5年たち、建物の解体が相次いでいる。紹介した24カ所のうち、同小の他に既に1カ所が解体され、4カ所程度で解体が検討されている。
 同会事務局を務める小林和彦さん(61)は「時代とともに歩んできた建物ばかり。残してほしいが、維持費用の問題もあり、強く主張するわけにもいかない」と話す。
 一方で建物を保存しながら有効に活用しようとする動きも始まっている。同小より7年前に建てられた同市本町1の市立第一小旧校舎は01年、老朽化のため使用が終わり、同じ年に国の登録文化財になった。
 地元から「周辺に残る蔵や寺などとともに新たな資源として活用したい」と要望が出されたのを受け、市は今後の活用方法の検討を07年度から始めることを決めた。校舎の修復設計に取りかかり、行政と地域、学識経験者が一体となった懇話会を作る予定だ。
 小林さんは「建物と街並みは一体。街づくりを考える時、趣ある建物の保存や活用も考えなければならない課題だ」と指摘している。