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◇汚染や反対で豊洲新市場も多難
 近未来的な建築物が建ち並ぶ江東区有明。その一角にある東京ファッションタウン(TFT)ビルに1月31日、都が進めてきた臨海副都心開発の関連会社を束ねる持ち株会社「東京臨海ホールディングス」が発足した。開発の仕切り直しを図る新会社のスタート。だが、目立ったセレモニーはなく、ひっそりとした幕開けとなった。
 持ち株会社の構想は、昨年5月に第三セクター3社(臨海三セク)が民事再生手続きを申し立てたことに始まる。最終的な負債総額は3611億円。返済するにしても50年以上かかる計算だ。
 金融機関と都は約2000億円を債権放棄。都は債権放棄分も含め計380億円を負担した。石原慎太郎知事は「負の遺産を引き継いで四苦八苦してきた。あのころは日本全体がすってんてんになった。その例の一つでしかない」と責任意識は薄い。持ち株会社は「東京臨海熱供給」の親会社として発足し、臨海三セク3社の合併会社、「ゆりかもめ」などが順次、子会社化される。
 先々代の鈴木俊一知事の時代から続く臨海副都心開発。昨年12月現在の就業人口が3万8000人(当初計画11万人)、居住人口は7660人(同6万人)と思い通りには進んでいない。
 開発に関連する都債残高は約4500億円。都は2014年度までに完済する方針で、今年度からを「総仕上げの10年間」として未利用地の開発を進める。臨海開発を監視する「臨海関連第三セクター都民オンブズマン」の前川雄司弁護士は「がん細胞を切除せず輸血だけをしてきた。肝心の病気は治っておらず、都が開発に関与する議論がないまま帳尻を合わせている」と批判する。
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 臨海の一角、江東区豊洲。都は12年度、総事業費1300億円で豊洲新市場(総面積44ヘクタール)の建設を予定する。だが、実現の道は多難だ。
 東京ガス工場跡地の新市場建設予定地の土壌・地下水汚染が発覚したのは01年1月。ベンゼン1500倍、ヒ素49倍、水銀24倍……。同社の汚染調査で、環境基準を大幅に上回る有害物質が検出された。ところが、石原慎太郎知事は翌2月、都議会で「豊洲地区を新市場の(中央区の築地市場からの移転)候補地とする」と表明する。
 「排ガス規制、環境問題を訴える知事がなぜこんな事をするのか」。移転に反対する築地市場の仲卸たちは憤る。一部仲卸が昨年5月、「豊洲では食の安全を確保できない」と結成した「市場を考える会」は現在、加盟数約200業者。築地仲卸の4分の1に上る。
 移転に対する不満の理由は他にもある。16年の五輪招致を目指す都は今年度初めに突然、築地跡地を「五輪のメディアセンターに」と打ち出した。移転に反対し続けた中央区が「苦渋の決断」で反対の旗を降ろした直後だった。区幹部は「実現性が分からない五輪に振り回されれば、移転後の築地再生が遅れる。石原都政は地元の声を地域エゴとしかとらえない」と不信感を募らせる。
 「専門家の意見を聴いて(土壌汚染について)再調査するかしないか決める」。石原知事が初めて移転反対派に配慮したのは今月16日。都知事選告示6日前、最後の定例会見だった。=おわり
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 この連載は木村健二、北村和巳、夫彰子が担当しました。