長いようであっという間に終わったサマーブレイクの後、F1はオランダグランプリから再始動となりました。これから先も連戦が続くので、ドライバーもチームも関係者も体力勝負ということになりますが、残り10戦でどんなドラマが見られるか楽しみにしています。

／＊・・・Preparation：コースとタイヤ・・・＊／

シルクイ・ザントフールト（ザントフールト）

（Formula 1®から抜粋）

コース長：4.259 km

レース距離：306.587 km（72 laps）

特徴：・中低速コーナーが多くレイアウトされた中高速サーキット

　　　・最大19度ものバンク角を持つコーナーが2箇所ある

　　　・北海が近いため、風が強く、路面が汚れやすい

　　　・ストレートが短く、オーバーテイクが難しい

　　　・主なオーバーテイクポイントはターン1

タイヤのコンパウンド：C1〜C3（非常に硬い〜標準）

／＊・・・Qualifying：予選・・・＊／

PP　4 L・ノリス（マクラーレン・メルセデス）

2位　1 M・フェルスタッペン（レッドブル）

3位　81 O・ピアストリ（マクラーレン・メルセデス）

4位　63 G・ラッセル（メルセデス）

5位　11 S・ペレス（レッドブル）

6位　16 C・ルクレール（フェラーリ）

7位　14 F・アロンソ（アストンマーティン・メルセデス）

DQ　23 A・アルボン（ウィリアムズ・メルセデス）

8位　18 L・ストロール（アストンマーティン・メルセデス）

9位　10 P・ガスリー（アルピーヌ・ルノー）

10位　55 C・サインツ（フェラーリ）

11位　44 L・ハミルトン（メルセデス）

12位　22 角田裕毅（RB・レッドブル）

13位　27 N・ヒュルケンベルグ（ハース・フェラーリ）

14位　20 K・マグヌッセン（ハース・フェラーリ）

15位　3 D・リカルド（RB・レッドブル）

16位　31 E・オコン（アルピーヌ・ルノー）

17位　77 V・ボッタス（キックザウバー・フェラーリ）

18位　24 ジォ・G（キックザウバー・フェラーリ）

DQ：Disqualified／失格。

Pole Position Time：1:09.673（220.06 km/h）

Fastest Lap Time Throughout the Weekend：PP Time と同じ

／＊・・・Race：決勝・・・＊／

WIN　4 L・ノリス（マクラーレン・メルセデス）

2位　1 M・フェルスタッペン（レッドブル）

3位　16 C・ルクレール（フェラーリ）

4位　81 O・ピアストリ（マクラーレン・メルセデス）

5位　55 C・サインツ（フェラーリ）

6位　11 S・ペレス（レッドブル）

7位　63 G・ラッセル（メルセデス）

8位　44 L・ハミルトン（メルセデス）

9位　10 P・ガスリー（アルピーヌ・ルノー）

10位　14 F・アロンソ（アストンマーティン・メルセデス）

11位　27 N・ヒュルケンベルグ（ハース・フェラーリ）

12位　3 D・リカルド（RB・レッドブル）

13位　18 L・ストロール（アストンマーティン・メルセデス）

14位　23 A・アルボン（ウィリアムズ・メルセデス）

15位　31 E・オコン（アルピーヌ・ルノー）

16位　2 L・サージェント（ウィリアムズ・メルセデス）

17位　22 角田裕毅（RB・レッドブル）

18位　20 K・マグヌッセン（ハース・フェラーリ）

19位　77 V・ボッタス（キックザウバー・フェラーリ）

20位　24 ジォ・G（キックザウバー・フェラーリ）

Winner's Time：1:30:45.519（202.68 km/h）

Fastest Lap Time：1:13.817（207.71 km/h @lap 72）

4 L・ノリス（マクラーレン・メルセデス）

／＊・・・Summary：余裕綽々・・・＊／

優勝はノリスでした。通算2勝目を、チャンピオンシップの最大のライバルの母国で決めてみせました。まあ、現時点でチャンピオンを目指すにはあまりにも大きなポイント差（レース終了後で70ポイント）がありますから、本人はチャンピオンシップは考えていないと言っていますけどね。調子がいいマシンを持つノリスとしてはここからできるだけ優勝してじわじわとフェルスタッペンとのポイント差を縮めることが先決で、1レースでひっくり返せる25ポイント差くらいになればチャンピオン争いを意識し始めるのかもしれません。

ただ、マクラーレンとしてもすべてのコースで速さがあると認定された訳でもないですし、スパ（ベルギー）のようにチームメイトのピアストリがノリスに勝つことがあるかもしれませんし、リタイア（ノーポイントレース）をしてしまうこともあるかもしれません。そのため、現時点でドライバーズチャンピオンを目指すのはまだ非現実的と思っておくくらいの方が、ノリスにとっては気が楽かもしれませんね。ただ、コンストラクターズチャンピオンに関しては、今のマシンの調子を考えれば射程圏内と言っていいでしょう（レース終了後でレッドブルとマクラーレンのポイント差は30ポイント）。

今回のレースを振り返ると、ノリスはスタート以外はほとんど完璧なレースをしたと言っていいでしょう。ただ、以前から言われていたように、やはりスタートはノリスのアキレス腱と言っていいのかもしれません。今回は結果的にオーバーテイクできてトップを奪還できたから問題なかったのですが、シンガポールのようにオーバーテイクの難しいトラックでは命取りになりかねません。ノリスがこれを克服できるのかは注目していこうと思います。でもレースペースは圧倒的で、2位のフェルスタッペンにまったく反撃のチャンスを与えませんでした。おまけに最終周に、40周以上走行して使い古したハードタイヤでファステストラップまで奪取してハットトリックを達成。もはや彼がやっていることは王者のレースです。

2位はフェルスタッペンでした。プライドの高い彼にとって、大挙してきた母国のファンの前で初めて負けた姿を見せることになったのは相当応えたでしょう。スタートでノリスの前に出て少し引き離した時はこのまま逃げ切る算段だったのかもしれませんが、これはタイヤを最適に使用するためのノリスのいつもの手口で、その後まもなくものすごいペースであっさりと逆転されてしまいました。チームの母国のオーストリアでは多少ダーティーな手段を使ってでもトップを守ろうとしたのですが、今回はノリスとのスピード差がありすぎてもはやバトルできるレベルにないと観念したのかあっけなくオーバーテイクを許し、その後はまったくフォローできずに離される一方でした。フェルスタッペンはマシンの限界まで引き出していたとは思いますが、今回のレッドブルではこれが精一杯だったのでしょう。

3位はルクレールが入りました。これでルクレールは2戦連続のポディウムフィニッシュです。王者レッドブルがいて、マクラーレンが日ごとに速さを増していて、メルセデスの復活の足音が聞こえてくる中でのこの結果は上々だったと言えます。ルクレールのレースについてぼくが注目したのは第1スティント。スタートでポジションを上げてピアストリの真後ろにつけ、このレース唯一のピットストップまでずっとプレッシャーをかけ続けました。これは直接オーバーテイクにはつながりませんでしたが、他車の真後ろにつけてもデグラデーション（タイヤの性能劣化）が小さく、ペースを失わないフェラーリの特性とルクレールのドライビングは素晴らしかったと思います。そして今回も、抜きにくいコース特性だったとはいえ、ペースの速いマシンを最後まで抑え切ったのも良かったです。

4位はピアストリ。ピアストリは珍しくスタートで順位を落としてしまい、ラッセルの後ろに捕まったことが痛かったですね。今のマクラーレンの実力を考えれば、ラッセルに前を塞がれていなければルクレールに張り付かれてアンダーカットされることもなく、無難に3位以内（あるいは2位）でフィニッシュできていたことでしょう。でも今回ピアストリのレースについて印象的だったのは、ルクレールの後ろでタイヤを痛めて抜けなかった彼と、フェルスタッペンの後ろでタイヤを保たせてオーバーテイクに繋げたノリスとの差です。最近レースの組み立ては良くなってきたとはいえ、このレースを見る限り、ピアストリはまだまだノリスから学ぶことは多いのかもしれません。

5位にはサインツが入りました。今週のサインツは金曜日から非常に流れが悪く、マシンを仕上げられなかったためか予選ではQ2敗退と不調でした。でも決勝では見違える速さを見せ、ラッセルの無駄なピットストップもあって、5位まで這い上がってきたのは良かったと思います。またレースペースが良いだけでなく、コース上でペレスをあっさりとかわせたことも大きかったですね。ルクレールもそうですが、予選ではなかなかいいタイムが出なかったにもかかわらず、決勝では予選からは期待できないほどのペースを発揮できた原因を追究することは、今後のレースに向けても非常に重要だと思います。次回はさらにいいレースを見せてもらえると期待しています。

／＊・・・Next：イタリア・・・＊／

次回はバック・トゥ・バックでイタリアグランプリです。今シーズンイタリアでは2回目の開催となりますが、今回の舞台は超高速のモンツァ・サーキットです。ここは4本の長いストレート（フルスロットルで走行するコーナー区間を含む）を中高速コーナーやシケインで繋いだような、コーナー数11のとてもシンプルなトラックです。

この特色のためチームはマシンのダウンフォースを削りに削って最高速を伸ばす傾向にあり、グランプリサーキットの中では平均スピードが最も高くなるコースでもあります（最高速に関しては、高地で空気抵抗が最も小さいエルマノス・ロドリゲス・サーキット（メキシコ）と同じくらいのレベル）。確かにダウンフォースをつけると最高速が伸びない代わりに、コーナーはより速くドライブできますし、350 km/h近いスピードからのハードなブレーキングでも安定します。そしてタイヤを長く保たせることも可能です。でもそこで得られるゲインでは、レースペースを上げることはできてもオーバーテイクにつなげることは難しく、結局ダウンフォースを削って最高速を伸ばした方がオーバーテイクすることもできますし、オーバーテイクされるのをディフェンスすることもできます。

一方で、かつてセバスチャン・ベッテルがレッドブルにいたときに最高速と引き換えにダウンフォースを強めにつけてレースで勝ったことがありました。でも、あの戦略は予選で確実にPPを獲れるような状況下での先行逃げ切りでしか通用しないはずで、予選順位（スターティンググリッド）以上でフィニッシュすることが難しく、PPが獲れなかった時点でレースを失うことになるでしょう。ただ、レース中に上手にDRSトレインに乗ることができれば、勝てないまでも上位でフィニッシュすることはできるかもしれませんが、大きな賭けになるので特に上位チームの中でこれをやってくるチームやドライバーはなかなかいないでしょうね。

と、いつもならこれでお話はお終いですが、今回はちょっと状況が違います。というのも今回トラックの路面が全面再舗装されているらしいので、それが大きなレースの鍵を握っているかもしれないからです。このトラックはピットストップのロスタイムがものすごく大きい割に意外と抜きにくいトラックなので、通常ほとんどのドライバーが1ストップを狙ってくるはずです。ですが、再舗装されたての路面は表面が荒くてちょっとしたミスやバトルやチェイスでもタイヤを痛めやすくなるため、デグラデーションが大きくなって2ストップが主流になってしまう可能性があります。こうなると上手くタイヤを保たせて1ストップで完走した方がトータルで速くなることもあり得ます。どういうレースが展開されるかの興味津々ですね。

＊＊　Playback 2023　＊＊＊＊＊＊＊＊＊

Pole-sitter：55 C・サインツ（フェラーリ）

Winner：1 M・フェルスタッペン（レッドブル）

Fastest lap：81 O・ピアストリ（マクラーレン・メルセデス）

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昨年のイタリアグランプリではフェルスタッペンが史上初の10連勝を飾りました。それまではベッテルの9連勝が最多で、それでも十分すごいのですが、まさか10連勝が見られるとは思っていませんでした。それだけ昨シーズンのレッドブルとフェルスタッペンは圧倒的だったということです。もちろんこの10連勝に至るまで様々な特色を持つサーキットがあって、様々なレースコンディションがあって、その中でレースをことごとく制してきた訳なのでレッドブルとフェルスタッペンの成し遂げたことを貶めることはできません。本当に素晴らしい歴史の1ページを見られて良かったと思います。

ただぼくが、昨年のモンツァで個人的に最も印象的だったのは、サインツとルクレールのバトルでした。フェラーリの地元でハードでありながらもクリーンなバトル見せてくれました。もっと欲を言えば、これがトップ争いであればなお良かったのですが、そうでなくても十分レースを盛り上げてくれたと感じました。一部では、チームがオーダーを発令しておとなしくフィニッシュさせるべきだったという意見もありますが、ぼくはこの優秀な2人のドライバーなら決して愚かな真似をしてレースを台無しにしないと思っていたので、これはこれで良かったと思っています。できれば、今度こそこの2人の優勝争いが見たいものですね。

年に1度の高速バトルを楽しみたいと思います。

2024年 第15戦 オランダGP

2024年第15戦オランダGP