Glass Labyrinth

Glass Labyrinth

僕の視点からF1での Ferrari のレースと Formula1 Grand Prix について書いてみます。

 

今シーズン2度ある3連戦の1回目、その最後の1戦はイギリスグランプリでした。イギリスは全10チームのF1チームのうち、フェラーリ、RB、キックザウバーを除く実に7チームが本拠地を構えていて、ここをホームグランプリとして意気込むチームがたくさんあるのが特徴です。

 

これを読んでクエスチョンマークがつく方もいらっしゃると思います。それはレッドブルが優勝した時に流れるのは優勝したドライバーの出身国の国歌(主にフェルスタッペンの母国のオランダ国歌、ヴィルヘルムス・ファン・ナッソーウェ)とオーストリア国家だからではないでしょうか。実はここには、チームの本拠地はチームが属する国籍内に置く必要がない、というF1独特の慣習が関係しています。このためチーム国籍をオーストリアとするレッドブル、ドイツとするメルセデス、アメリカとするハース、フランスとするアルピーヌはいずれもイギリスをホームグランプリだと名乗ることができるのです(現在グランプリが行われない国を国籍とするメルセデスとアルピーヌは実質的なホームグランプリと言えます)。ちなみに、かつてメルセデスが強かった時代よく耳にした「ブラックリーとブリックスワースのファクトリーの努力に感謝する」という言葉は、メルセデスのドライバーならば(強制ではないとは思いますが)必ず言わなければならないセンテンスなのですが、もちろんこの2つの地名はいずれもイギリスに存在します(本社のあるシュトゥットガルト(ドイツ)という単語もたまには出てきます)。そして、チーム国籍も本拠もともにイギリスに置くマクラーレン、ウィリアムズ、アストンマーティンももちろんホームグランプリとなるので、F1でイギリスグランプリが盛り上がらないことはありえません。反対にチーム国籍の国でも本拠地を構える国でもグランプリが行われないキックザウバー(本拠地スイス/スイス国籍)はちょっと不憫ですね。

 

 

/*・・・Preparation:コースとタイヤ・・・*/

シルバーストン・サーキット(シルバーストン)

(Formula 1®から抜粋)

 

コース長:5.891 km

レース距離:306.198 km(52 laps)

特徴:・第1回F1グランプリが開催されF1発祥の地とされる高速サーキット

   ・コーナーの多くを中高速コーナーが占める

   ・右の高速コーナーが多いため左フロントタイヤに厳しい

   ・天候が変わりやすく、風が強い

   ・主なオーバーテイクポイントはターン6、ターン15

タイヤのコンパウンド:C1〜C3(非常に硬い〜標準)

 

 

/*・・・Qualifying:予選・・・*/

PP 63 G・ラッセル(メルセデス)

2位 44 L・ハミルトン(メルセデス)

3位 4 L・ノリス(マクラーレン・メルセデス)

4位 1 M・フェルスタッペン(レッドブル)

5位 81 O・ピアストリ(マクラーレン・メルセデス)

6位 27 N・ヒュルケンベルグ(ハース・フェラーリ)

7位 55 C・サインツ(フェラーリ)

8位 18 L・ストロール(アストンマーティン・メルセデス)

9位 23 A・アルボン(ウィリアムズ・メルセデス)

19位 14 F・アロンソ(アストンマーティン・メルセデス)

11位 16 C・ルクレール(フェラーリ)

12位 2 L・サージェント(ウィリアムズ・メルセデス)

13位 22 角田裕毅(RB・レッドブル)

14位 24 ジォ・G(キックザウバー・フェラーリ)

15位 3 D・リカルド(RB・レッドブル)

16位 77 V・ボッタス(キックザウバー・フェラーリ)

17位 20 K・マグヌッセン(ハース・フェラーリ)

18位 31 E・オコン(アルピーヌ・ルノー)

19位 11 S・ペレス(レッドブル)

20位 10 P・ガスリー(アルピーヌ・ルノー)

 

Pole Position Time:1:25.819(247.12 km/h)

Fastest Lap Time Throughout the Weekend:PP Time と同じ

 

 

/*・・・Race:決勝・・・*/

WIN 44 L・ハミルトン(メルセデス)

2位 1 M・フェルスタッペン(レッドブル)

3位 4 L・ノリス(マクラーレン・メルセデス)

4位 81 O・ピアストリ(マクラーレン・メルセデス)

5位 55 C・サインツ(フェラーリ)

6位 27 N・ヒュルケンベルグ(ハース・フェラーリ)

7位 18 L・ストロール(アストンマーティン・メルセデス)

8位 14 F・アロンソ(アストンマーティン・メルセデス)

9位 23 A・アルボン(ウィリアムズ・メルセデス)

10位 22 角田裕毅(RB・レッドブル)

11位 2 L・サージェント(ウィリアムズ・メルセデス)

12位 20 K・マグヌッセン(ハース・フェラーリ)

13位 3 D・リカルド(RB・レッドブル)

14位 16 C・ルクレール(フェラーリ)

15位 77 V・ボッタス(キックザウバー・フェラーリ)

16位 31 E・オコン(アルピーヌ・ルノー)

17位 11 S・ペレス(レッドブル)

18位 24 ジォ・G(キックザウバー・フェラーリ)

Ret 63 G・ラッセル(メルセデス)

DNS 10 P・ガスリー(アルピーヌ・ルノー)

 

Ret:Retire/リタイア。

DNS:Do Not Start/スタートせず。

 

Winner's Time:1:22:27.059(222.82 km/h)

Fastest Lap Time:1:28.293(240.20 km/h @lap 52)

55 C・サインツ(フェラーリ)

 

 

/*・・・Summary:復活・・・*/

優勝はハミルトンでした。通算104勝。ついに2021年以降初めて通算勝利数記録を更新しました。デビューした2007年から2021年まで毎シーズン必ず1勝以上挙げてきたハミルトンですが、レギュレーションが変わった2022年以来ここ2年以上勝利を手にすることなく、今シーズンも厳しいのではないかと思いましたが、自身のホームグランプリというこれ以上ない舞台で大仕事をやってみせました。ハミルトンが勝つといつでもイギリスは大盛り上がりですが、今回はまたひとしおだったように感じます。

 

これでメルセデスはオーストリアから2連勝。前回の勝利は上位2台が自滅して棚ぼた的な要素が強かったですが、今回はセーフティカーもレッドフラッグもなく、運の要素の少ない真っ向勝負で勝ち取った勝利だったと思います。予選も決勝も、本当にメルセデスは速くなりました。もちろんブリティッシュウェザー(天候の変化)というスパイスがあって、ドライでの真っ向勝負とは違いましたが、逆にチームとしての総合力はある意味見られたように感じました。その意味では前回優勝者のラッセルは残念でした。マシントラブルでリタイアしていなければ4位以内、あるいはポディウムを獲得していてもおかしくなかったですからね。

 

ただ今回のラッセルはトラブルが発生しなくても、ハミルトンよりも上にはいけなかったのかな、とぼくは考えています。これは現時点でのラッセルの弱点なのかもしれませんが、天候の変化などでレースが急展開した時の対応力があまり強くないように感じます。はっきり言ってアドリブが弱い。これはある程度、経験と言う要素も関係してくるのかもしれませんし、比較対象が百戦錬磨のハミルトンということもあるかもしれませんが、2019年にF1デビューしたラッセルももうかなりの経験を積んできている訳ですし、この辺りを改善していかないとF1のチャンピオン獲得は厳しくなるかもしれません。ハミルトンがチームメイトのうちに彼から学ぶことはまだまだ多いんじゃないかな、とぼくは思っています。

 

2位はフェルスタッペンでした。途中雨が強くなってきたときはメルセデスからもマクラーレンからも遅れを取りましたが、最後にドライ路面に変わるといつものペースを取り戻し、2位を獲得しました。本当にしぶとい、タフなドライバーです。今回はメルセデス、マクラーレンに次ぐ3番手のマシンだったように見えましたが、追い上げは素晴らしかったと思います。さすがはチャンピオンという走りを見せてくれました。

 

3位はノリスでした。そして4位にはピアストリが入り、戦前は優勝候補と思っていたマクラーレンは3-4フィニッシュとなりました。今回は戦略的な失敗でさらなる上位フィニッシュをのがしたと言えるかもしれません。まずピアストリは、雨が強くなってきてインターミディエイトタイヤに交換するタイミングを1周延ばしたのが致命傷となり、実質的に優勝戦戦から後退しました。あの場面でダブルスタックでノリスと同じタイミングでタイヤ交換していれば、そこまで大きなタイムロスにはならず、終盤のドライでのピアストリの速さを考えても優勝の目があったかもしれません。でも、ダブルスタックのタイムロスは実は小さくなく、それをした今までのすべてのレースを見てみても、2番目にタイヤ交換した側が最初に交換した側を抜いて優勝するのは難しかったのかな、とも思います。

 

一方ノリスは、トップ走行中の最終スティントでミディアムタイヤではなくソフトタイヤを履き、早めにタイヤ交換していたハミルトンにアンダーカットされただけでなく、途中でペースも落ちてしまいました。ミディアムタイヤを履いていれば、優勝こそ無理だったかもしれませんが、2位は確保できた可能性があります。思った以上にタイヤへの負荷が大きかった訳ですが、同じソフトタイヤを履いたピアストリは終盤のドライ路面で最速でした。いつもはノリスの方がタイヤの扱いが上手く、ピアストリが失速することが多いのですが、今回は逆だったので不思議な展開でしたが、もしかするとハミルトンの後方をフォローすることになって、スティント序盤に乱気流の影響を受けたのかもしれません。また、ドライタイヤへの交換する判断がメルセデスやレッドブルに比べて遅く、勝負勘と言うか、マクラーレンの戦略自体がレッドブルやメルセデス並みではないなと感じさせられました。真のトップチームになるには、まだまだ時間がかかりそうですね。

 

最後にフェラーリですが、サインツが5位、ルクレールは14位でした。サインツは途中でフェルスタッペンを追い回していましたし、最終的に予選順位よりも上位でフィニッシュできたので最低限の仕事は果たしてくれました。一方のルクレールは序盤はペースも良く、手こずっていたストロールをかわしてからはサインツに次ぐところまで上がってくることを期待していました。でもやはりルクレールにはマシンが乗りにくかったのか、あるいはギャンブルに出たのか、雨が降り始めてすぐにインターミディエイトタイヤに交換してしまい、これが運の尽き。ぼくもトラッカーでのフォローをやめようかと思うくらいのポジションにまで落ちてしまい、あとは挽回する術はありませんでした。それを考えると、弱い雨の中をドライタイヤを履いた今のフェラーリで走り切ったサインツは素晴らしかったと思います。

 

まあ、今回のフェラーリには、シルバーストンでドライブするにはあまりに強烈な欠点があり「捨てレース」だったので、正直ほとんど期待していませんでした。もうチャンピオンシップ2位も危うくなりましたが、それは今はもうどうでもいいです。ちゃんとトップ争いできるようなマシンを造ってほしいです。次回以降に期待しています。

 

 

/*・・・Next:ハンガリー・・・*/

次回は恒例、真夏のハンガリーグランプリです。舞台はブダペスト郊外のハンガロリンク。ここはいつも暑くなりすぎるので、春先とかもっと早い時期に開催した方がいいと思いますが、そういう訳には行かないのでしょうかね。

 

ハンガリーグランプリの特徴を表す言葉としてよく「ミッキーマウスサーキット」とか「壁のないモナコ」といった表現が使われることがありますが、有り体に言うと、ぼくはこれらの表現は好きではありません。なんとなれば、それらは現実を正しく表現できていないからです。ミッキーマウスだというのなら、どこが耳でどこがあごでどこがヒゲなのか教えてほしいものです。

 

また、2022年のハンガロリンクの予選でのポールポジションラップの平均スピードは203 km/hを超えます。これは同じ2022年まで使用されていた改修前のバルセロナ(スペイン)のPPタイムとは10 km/hほどしか変わりませんし、逆にメキシコシティよりも4 km/h以上も速いのですが、バルセロナもメキシコシティも低速サーキットと言われたことすらないと思います(ちなみにこのシーズンのモナコのPPラップの平均スピードは168 km/hほど)。ただグランプリサーキットという括りで見れば平均スピードが低い方の部類というだけで、今日日決して遅いトラックという訳ではありません。それなのに遅いトラックの象徴であるモナコを引き合いに出していることが納得いかない訳です。また、モナコのトラックから壁を取っ払っても、コーナリングスピードはハンガロリンクとは比べものにならないほど遅いはずですし、路面のアスファルトも気候もまったく異なります。おそらくF1中継が始まった当初の、Hパターンのミッションを使って空力マシンではないマシンをドライブしていた頃のテレビの遺跡をいまだに使い続けているのでしょう。別にテレビに限った話ではないですが、媒体は何であれ、現実に即してアップデートできないというのは悲しいものです。

 

閑話休題。簡単にトラックの特徴を説明すると、ここは中速コーナーが多くレイアウトされたコースで、ストレートも短いため、オーバーテイクは難しいとされています。ただ最近ではマシンのレギュレーションが変わったことや、決勝日の風向きもあってか(ストレートで向かい風の場合は前走者との間で風から受ける空気抵抗の差が大きくなり、後続車はオーバーテイクしやすくなる)、そこまでオーバーテイクは少なくないようです。ただストレートの短さからやはり簡単ではないと思われるので、予選順位は重要となります。また、ここは暑くなりやすいのでタイヤマネジメントが重要となります。ピットストップもイレギュラーなことがなければ通常2回はあるので、ここで逆転が起こる可能性があります。戦略が非常に重要となりす。

 

** Playback 2023 *********

Pole-sitter:44 L・ハミルトン(メルセデス)

Winner:1 M・フェルスタッペン(レッドブル)

Fastest lap:1 M・フェルスタッペン(レッドブル)

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昨年のハンガリーグランプリはフェルスタッペンが制しました。まぁ、昨シーズンはほとんどのグランプリをフェルスタッペンが制していたのでこれは大したことではないのですが、そのフェルスタッペンを抑えてハミルトンがPPを獲得していたことは特筆すべきかなと思います。ただそのハミルトンはスタート直後にフェルスタッペンにあっさりかわされて、優勝争いらしい争いは見られませんでした。ちなみにレースでのハミルトンは、ノリスとペレスにも抜かれてポディウムすら失っています。でも今のメルセデスは、この時のメルセデスとは違ってより本物の速さを手に入れているように感じます。

 

面白いレースが見られることを期待しています。