大里鬼(うふざとうに) | 沖縄の裏探検

大里鬼(うふざとうに)



全国12人のムーチー(鬼餅)由来ファンの皆様。今年も我々ムーチニアンの待ち焦がれた日がやってきました。その日とは今年の1月18日(旧暦12月8日)です。

そしてここは南城(なんじょう)市大里(おおざと)。眼前に広がる森はギリムイグスクです。
ギリムイグスクの道向かいには南部東側を勢力に収めた誉れ高い島添大里(しましぃうふざと)グスクがあります。
そんなギリムイグスクですが、このグスクの西側の崖に大里鬼と呼ばれた童貞のお兄ちゃん最凶スーパーヴィランが住んでいた洞窟があるとされています。
南城市のサイトや書籍によると『大里鬼の住んでいた洞窟は不明』とされています。
ところが伝承や民話では『ギリムイグスクの西側にある洞窟に大里鬼が住んでいた』と伝わります。

今回は東風平(こんちんだ、現在の八重瀬町東風平)在住の元大里村民の方から『ギリムイグスクの下には風葬墓がたくさんある』と情報を仕入れていました。
風葬墓は洞窟や岩の窪みに亡くなった人の遺体を安置する古い形態の墓です。現在は使われませんが、古い集落の外れにはこうした場所が今も残っています。つまり洞窟がある可能性もあるのです。

では参りましょう♪。私ぁこの日を去年から計画を建てておりました。


ギリムイグスク北側にある湧水からアプローチを試みます。ここから反時計回りに西側へ回り込んでみる事にしました。
情報を頼りに進んで行きましたが、台風か大雨の影響があったのか数々の巨大な落石と倒木によって途中の道は削り落ちていました(谷;)。風葬墓のいくつかは崩落しているんじゃないかな?(汗)。
北西側に位置する斜面で情報通りに風葬墓をいくつか確認したところで、崖の高所の一角に何やら怪しい洞窟を発見しました。


うーわぁ、これどうやって登ろうか(;´д`)。


どうにか木と根と岩を掴んでロッククライミングしました。
うん?光が漏れてる。ここは上部が貫通しています。もしくは陥没があったのかも知れません。
僅かながら石筍の発達も見られます。洞窟だった事には違いなさそうですが、ここは方角的に違う気がします。ここについては後述します。

さっさと降りて西へ進みます。倒木を超え落石を超えて進んで行くと真西に近い位置に見るからに怪しい洞窟がありました。


中を確かめる為に取り敢えず近づいてみましょう。


中は小さな空間があります。落盤があったのだろうか。もしかしたらこれが大里鬼がいた洞窟?。位置的にはここっぽいけど確信はありません。
そして更に西へ進もうとしたその時!。


急勾配の斜面に不自然な寅ロープが上から延びています( ゚д゚)。これは登ってみるしかないですね。


ヒーヒー言いながら登った先はギリムイグスク内にある拝所の横でしたが、この拝所を見て驚きました。実はこの拝所は『大里鬼の洞窟への遥拝所』です。洞窟の位置は遥拝所の真下近くになります。
遥拝所を簡単に説明すると、目的の拝所が遠方にある為に『ここから拝してもよい』という理由で設置されたりします。洞窟へ行くのが大変なのでここに遥拝所が設置されているのかも知れません。

あの確信の持てない洞窟が大里鬼の住んでいた洞窟なのだろうか。


拝所の右奥の木の間には、もはやほぼ垂直に近い角度で降りられる寅ロープがありました。ここからだと洞窟の左側へと進めます。スパルタンな人にはここからがお薦め。
自分は遥拝所の左側の斜面から上がってきました。

ギリムイグスクは入口から割と楽に進めるグスクなので最初からここに来て寅ロープを使って降りて行けば良かったかもですね。でもね、寅ロープの存在は知らなかったんだもの(^^;)。


ギリムイグスクの入口に向かって歩いていると上部が貫通した洞窟がありました。光が漏れていた洞窟はここが開いていたからなんですね。
グスクの入口から1〜2分ぐらいの距離をあんだけ難儀して崖を半周して踏破した自分を褒めてあげたい(笑)。

遥拝所の下にある洞窟が大里鬼の住んでいた洞窟かは断言しませんが鬼餅伝説のロマンは尽きません。
これがムーチニアンのムーチーに対する愛なんです。


ムーチーには欠かせないサンニン(月桃)。古くはクバ(ビロウ)の葉を包みに使いました。
科学の乏しい昔の人達がサンニンの抗菌作用を経験的に知っていたのか、単に香り付けの為に使用したのは分かりませんけどこの葉で包んでこそムーチーだと個人的には思うのよね。

さて今回の主役となる大里鬼ですが、彼は鬼餅の由来となった昔話の登場人物です。

毎年恒例なので簡素に書きますけど、
①大里鬼は遥か遠くの首里金城村から大里の洞窟に移り住んで人間や家畜を鍋で煮てバリバリ喰いました。
②大里鬼の妹はイカれた兄鬼を退治する為に鬼が好きだった餅に鉄を混ぜて故郷の金城村の崖に誘い出し、自分は普通の餅を、鬼には鉄入りの餅を出しました。
妹は餅をパクパク食べますが鬼は鉄入り餅に四苦八苦します。
③鬼は餅を普通に食べる妹を見ますが、妹は着物の下をはだけていました。そこには何やら怪しい口がありました。
④鬼は『why do you have underに変な口?』と聞きました。すると妹は『オ兄ィチャン、私ニハ2ツ口ガアッテ上ハ餅ヲタベル口、コレハワルイ鬼ヲタベル口ダョ‐』とスパイダーウォークで鬼を脅かして崖から落として退治しました。
⑤それが旧暦の12月8日だったのでした。完。

由来話は兄弟であったり姉弟であったり、エンディングに違いがあったりの様々なバージョンがあるので興味があればググッたり地元の字誌を読むなりして下さい。


そんな訳で迎えた旧暦12月8日。今年は紅芋味ですよ♪。
それにしても今年のムーチーの日は暑かった(-_-;)。ムーチーの日はムーチービーサ(鬼餅寒波)と呼ばれる寒い日になるのですが、25℃ぐらいあったんじゃないかと感じる暑い日でした。


トートーメーにウサぎました。しかしまぁサンニンがパッサパサ(汗)。包み方もちょっと雑ですな。


しむさ、中身が美味しければ結果オーライです♪。自分が幼少の頃なんて白餅か白砂糖入りの2種類しかラインナップなかったですからね。今のムーチーは素晴らしい。
ご馳走様でした(^‐^)。

それでは全国12人のムーチーファンの皆さま、来年もムーチーの記事があるか分かりませんけどまたお会いしましょう(笑)。