ムーチー(餅)を食べよう | 沖縄の裏探検

ムーチー(餅)を食べよう

沖縄の方言で餅を『ムーチー』と言います。狭義に『ムーチー』と言えばサンニン(月桃)の葉で餅を包んで蒸した鬼餅を指したりしますが、それ以外にもムーチーは色々とあります。

ちなみに沖縄の餅はもち米を粉にして水でこねる製法で製造される方式で団子の大きいバージョンになります。
まぁあまり深い事は考えません(笑)。


そんな訳でこれはトーナチンと呼ばれるムーチーです。『トーナチン』は『モロコシ』と呼ばれる植物の小さな粒を集めて挽いた粉を餅に混ぜた物です。


切ってみましょう。上にある白い物は片栗粉です。
一見すると色が茶色で黒糖入りかと思えばそうではありません。これはトーナチンの色です。
穀物由来のプツプツ感に栄養価プラスでほのかに甘い味がします。砂糖入りの白餅と大差ない感じです。

主にシーミー(清明祭)の供物として食べられます。


次はナントゥーです。


ナマコみたい(笑)。
ナントゥーは『年頭』を意味する方言が訛った呼び方で、他の呼び方ではナントゥース(年頭味噌)とも言います。この餅の特徴は赤味噌が使用されいて、形が長方形で大きさもある事です。
このメーカーでは上にゴマが乗っていますが、通常はピーナッツが十字形に飾られています。

甘さの中に香辛料とさりげなく感じる味噌の風味があります。
旧正月や旧盆に食べられたりしますが、祝いの席に出す場合もあるそうです。


沖縄の十五夜月見と言えば『ふちゃぎ』。ふちゃぎは『吹き上げ』が訛ったのが由来です。主に旧暦8月15日に仏壇に供えます。


こちらはウミウシみたい(笑)。
ふちゃぎの上には小豆がまぶしてあります。小豆は魔除けの意味もあります。

自分が子供の頃のふちゃぎは無味の白餅に塩で茹でた小豆を掛けているだけで、正直な感想で言うと美味しく食べていた物ではありませんでした。それに小豆がアレの卵にしか見えないのが子供心に恐怖でした(^^;)。
今は色んな味付けがされていて、小豆も砂糖で煮て甘いのでとても食べやすいです。


そしてこれはお馴染みのムーチー(鬼餅)。カーサムーチーと呼ばれたりします。サンニンの葉の香りが沖縄県民の食欲を促します。


何度か記事に書いてるので由来はもう書きません(笑)。
このムーチーも現在は色んな味があります。画像のムーチーは紅芋味だったと思うけど、色だけで見たら何だろうってなりますね。

サンニン以外にクバ(ビロウ)の葉を使う場合もあるそうで、クバの葉からサンニンの葉に移行したという話もあります。そうなるとカーサムーチーはクバの葉を使うのが伝統的なのかも知れません。
沖縄の民話で鬼を退治した旧暦12月8日に食べられています。一部では7日に行う地域もあります。


最後は『うちゃぬく』です。
うちゃぬくは江戸時代の『お茶の子餅』という軽食や小さな茶菓子が琉球に伝わった際に訛って呼ばれているのが由来とされています。『軽食=簡単』みたいな意味が転じて『お茶のこさいさい』の語源になったという話があります。

うちゃぬくは少し特殊で、台所の火の神を迎える旧暦1月4日の『ひぬかんうんけー(火の神お迎え)』、新暦4~5月頃に行われる墓参りのシーミー(清明祭)やカミウシーミー(神御清明)、彼岸の頃に行う『やしちぬうがん(屋敷の御願)』、火の神が天に戻る旧暦12月24日の『うがんぶとぅち(御願解き)』等、様々な場面に使用されます。
下から大中小と三段重ねの餅が3つあって、今世、中世、古世だったり天、地、人とか色んな解釈があります。
9個の餅で1セットですが、実は一番上の小さな餅が1個予備にあって、別の場所で供物にする時には真ん中の一番上の餅と予備の餅を取り替えます。これで『新品になった』として再び使用します。

祭祀に使用する餅なので餡無し、砂糖無しの白餅を使う事になっていますが、明治期の士族のシーミーにはきな粉をまぶしたうちゃぬくを供物にしていた例もありました。
最近は砂糖入りやお菓子で作られたうちゃぬくも売られています。

昔は那覇のアーケード街の平和通りには衣装ケースみたいな箱に餅を並べてビニールを掛けて、椅子に座ったオバァ達が横一列に並んで道端で餅を売っていたものでした。おやつ感覚で普通に食べていたぐらい身近にありました。今は道では売っちゃいけないのかな?。
県内の40~50代オジサン、オバサン達でオリオンシネマ3とか桜坂琉映で映画を観た帰りにみたらし団子を買って食べた人もいるでしょ?(笑)。

そんな沖縄のムーチー事情ですが、沖縄に来たら個性的なムーチーを食べましょう♪。
ちなみにチン(ミナミクロダイ)やアバサー(ハリセンボン)もムーチー大好物との事です(≧▽≦)。