誤算 Ⅶ | quo world

quo world

 いろいろ。。

数日して 男が私を訪ねてきた
肩の荷を降ろした男は せいせいとした顔で通夜参列のお礼を言い 
彼女との生活を武勇伝の如く私に話した

  

20才以上年の離れた男と女
男にとっては 母親みたいなものだったらしいが 彼女にとっては一世一代の恋人であった

 

彼女が動けなくなってから 男は近くの部屋にベッドを移し寝泊りをしていた
ある日 動けないはずの彼女が夜中に 押し車にすがりながらよろよろと男の元へ行き
「今夜は一緒に寝て欲しい」と せがんだそうだ

 

「真夜中に寝たきりのはずのオムツをはめたばーさんが 枕もとに立って 一緒に寝てくれというんだ

オレはびっくりしたけど ふとんに入れて腕枕をして身体をさすってやったよ さすがにそれ以上の事はする気にはなれないがね それでも 彼女は嬉しいと喜んだ

こんなに人を好きになった事は 後にも先にもあなただけ…だと 常日頃から言っていたし オレは彼女の期待に答えてやったんだ 最後まで看るって言う約束も果たしたし…

まぁ こんなに長生きするとはおもわなかったけどね」

それから
「形見じゃないけど あんたには世話になったし オレがもってても仕方ないからもらってくれないか?」

と 生前彼女がはめていた指輪を私に差し出した
「どういう形であれ それは あなたがもってたほうが 彼女は喜ぶとおもいますよ」
やんわり辞退したが その指輪に宿っていそうな 彼女の想いが空恐ろしく とても手にする気はおきなかった。。

 

薄々と男が彼女のお金を使い込んでいたのははわかっていたはずだし 死後保険金を男が当てにしていたことも…
お金と引き換えに得た愛情で 本当に彼女は幸せだったのだろうか?

 

その後男は姿を消した
と思っていたが 実は 彼女が亡くなって接点が失われただけで 思いのほか近くに住んでいた
古い家だが一軒家を購入して町内に住んでいるらしい

 

電話をかけてきた男が言った
「ヘルパーさんを頼みたいって女性がいるんだけど 派遣してくれる?」