※肝心なところはぼかしていますが、結構ネタバレの内容なので
この映画を未見の方はご注意ください。
先日観た“ウエディングベルを鳴らせ”という映画の感想です。
http://www.weddingbell.jp/
ちなみに映画を観た後でサントラ(日本版は未発売のようで、輸入版を購入)を購入しましたが、
タイトルは“Promiss Me This”でした。これが英語でのタイトルなのでしょう。
あらすじ
セルビアの山奥で祖父の手ひとつで育てられた少年ツァーネ。
ある日彼は「町へ行って牛を売り、更に次の3つのことを約束しろ」と祖父から命じられる。
1 牛を売ったお金で聖ニコラスのイコンを買う
2 自分のためのお土産を買う
3 お嫁さんを見つける
約束を果たすべく都会へやって来た少年ツァーネは、さっそく可憐な女学生ヤスナに一目惚れ
し、あの手この手のプロポーズ大作戦!しかし彼の前に強力な壁が立ちはだかる。それは
“セルビア初の世界貿易センタービル”建設を企む振興マフィア。ヤスナの美貌に目をつけた
マフィアのボスは、彼女を娼館で働かせようと目論んでいた。
一方村で帰りを待つ祖父ジヴォインも、唯一の隣人ボサから熱烈に結婚を迫られ...
はたしてツァーネはヤスナを悪党の毒牙から守り、村に連れて帰れるのか?
祖父と孫のダブルウエディングは実現するのか!?
いや~、終始笑いが止まらない快作でした。まず冒頭は主人公のツァーネと祖父のジヴォインの
住む家での日常の光景から始まるのですが、この家があちこちにカラクリが仕掛けられた
とてつもないシロモノ。お爺さんはツァーネを起こそうと目覚ましの仕掛けを作動させるの
ですが、“どうみてもやり過ぎだろ!”と突っ込まずにいられないその効果!。
あれで目覚めなければ生きてる人間じゃない!。
お祖父さん。発明が趣味のようで、色んなものを作ってます 隣人のボサ。何故かお爺さんにぞっこん!
そんな秘密基地みたいな家で暮らす二人の隣人は学校の先生でもあるボサだけ。勿論生徒は
ツァーネ一人だけ。このボサは何故かジヴォインにぞっこんで、執拗に結婚を迫っているの
ですが、ある日そのボサに惚れて彼女に求婚する男が現れます。その男が現れる度にお爺さん
は家の周囲にあれこれと設置した落とし穴や罠を駆使して撃退するのですが、その様が
この上なく楽しい!。ですがある時お祖父さんは自分が老い先短いことから弱気になり、
孫のツァーネに「町へ行って牛を売り、①そのお金で聖ニコラスのイコンを買う
②ツァーネ自身のお土産を買う ③お嫁さんを見つけて連れてくる」ということを
約束させ、彼を町へと送り出します。その際に「町にはお爺さんの親友のトリフンという靴屋がいるから、
彼のところに行けば力になってくれる」と言い渡すのですが、これが後に大きな助けとなります。
しかし、3つの約束のうち最後の嫁探しは現代日本に住む我々からしてみれば無茶振り
以外の何物にも思えません。しかし映画の舞台はセルビア。我々の常識で考えては
いけないのでしょう。
無事町へ着いたツァーネ。高層ビル(といっても10階程度ですが)を見て驚いたり、
魅力的な若い女の子についつい目が釘付けになったりと田舎者丸出し状態ですが、
自転車に乗ったヤスナという女の子に一目惚れし、牛を連れたまま彼女の後を
追い、彼女の家を突き止めます。う~ん、現代日本でこんなことをしたらストーカーと
して通報されてしまうなぁ。そこで彼女と多少のやりとりをした後、逃げてしまった
牛を追いかけるのですが、牛を捕まえて一安心したところをマフィアに言いがかり
をつけられて牛を没収されてしまい、更にガムテープでグルグル巻きにされて
その場に放置されてしまいます。
牛のツヴェトカ。いつの間にか売られてました。 スキンヘッド兄弟の片割れトプズ。ハチャメチャな
ちょっとドナドナを連想しました。 キャラですが、この映画のキーパーソンの一人。
実は監督エミールの息子で、音楽も担当。
見かけによらず多彩な人物のようです。
しかしそこは運良くお祖父さんに言われていたトリフンの靴屋の前で、二人のスキンヘッドの
男が現れて彼を助けてくれます。とはいっても最初彼らはツァーネのことをスパイか
何かかと疑ってたのですが、ツァーネから亡くなった自分達の祖父と彼の祖父が親友であった
ことを聞き、いきなり打ち解けます。そしてスラブ民族特有の恐ろしい習慣である男同士の
キスが炸裂!。う~ん、この習慣だけは違和感が拭えない。
そのスキンヘッド兄弟は銃やらなにやら物騒なものを沢山持っており、武装した彼等
の助けを得て無事牛の奪還に成功!。
ヤスナの通う学校にて。宙吊りになったツァーネはこの体制で彼女にプロポーズ!
その牛を売ってお金を手にしたツァーネは聖ニコラスのイコンを手に入れ、
最大の目的である嫁探しを実現するためにヤスナへの猛アタックを開始。
彼女の通う学校にも何度も行き、彼女に惚れている同級生の
悪ガキに殴られたりしつつも怯みません。う~ん、こういう姿勢は見習わないと
いけないなぁなんて思ってみたりして...。
マフィアのボスであるバヨ。
演じるミキ・マノイロヴィッチはクストリッツア作品の常連で、
「パパは出張中」の父親役、「アンダーグラウンド」の主役マルコ、
「黒猫白猫」では結婚式の戸籍官として出演しています。
今作では彼の快演が大きな見所の一つです。
そんなある晩、彼女の家の前に止めてあった車の車内ではヤスナの母とマフィアのボス
であるバヨが。ヤスナの母は生活苦のためかバヨの経営する娼館で働いているのですが、
借金があるらしく、バヨに借金を無しにする代わりに娘をよこせと言い寄られています。
それを聞いてしまったツァーネはヤスナを救うべく彼女にマフィアに狙われている
ことを伝えるのですが、彼女はそれを信じません。それでも少しずつ距離を縮めていく二人。
しかしある晩、ヤスナの家を訪れたツァーネは声を出せないように口にテープを
貼られた上に手足を縛られた彼女の母親と遭遇。ヤスナの母から彼女がバヨの
率いるマフィアに連れ去られたことを聞いたツァーネはスキンヘッド兄弟と
一緒にバヨの経営する娼館を襲撃。兄弟が建物を破壊(この方法がとても痛快!)
する隙をついてツァーネは彼女の救出に成功。そして一旦ヤスナの叔母の家に
避難するのですが、流石にそこらへんはマフィアで直ぐに場所を突き詰めて
襲撃してきます。そこでもスキンヘッド兄弟が大暴れ。更にツァーネもお祖父さん
ゆずりのトラップでマフィア達を翻弄し、仕上げにボスのバヨを写真の
睡眠装置で眠らせてあるおしおきを....。
それにしてもお祖父さん凄い!ウエディングベル ヤスナ役のマリヤ・ペトロニイェヴィッチ。
まで自分で作ってしまいます 映画初出演だそうですが、いい表情をみせてくれます
こうしてヤスナもツァーネの求婚を受け入れ、イコンとお嫁さんをゲット出来た
ためスキンヘッド兄弟の運転する車で二人はお祖父さんの待つ村へ。
お土産は?二人の永遠のキスがお土産だなんて羨ましいことを言っています。
しかし帰り着いた村では鐘の音が響いていて、お祖父さんが亡くなったと勘違いした
ツァーネはヤスナの手をとり一目散に走るのですが、実はお祖父さんとボサの結婚式と
誰かの葬式が時を同じくして行われていて、道を譲る譲らないでちょっとした騒動が持ち上がり、
更にそこへバヨ率いるマフィア達が襲撃してきて......
マフィアの銃撃を受けながらもウエディングベルを鳴らすために頑張る司祭。
シリアス?なシーンなのに観てて笑いが止まりません
後は書くのも無粋ですから、実際ご覧になって確かめて下さい。
ただヒントを言えば、ポスターでもHPでもハッピーエンドになるということは予告されています。
結局何故お祖父さんがボサの求婚を受け入れる気になったのかは不明ですが、
冒頭から憎からず思っているのは伝わってきたので細かいことの追求は止めましょう。
あと劇中でずっと空を飛び続ける意味不明な男がいます。
彼はずっとストーリー自体には無関係で、何のために出ているのか??でした。
でも最後の最後でやってくれました。流石クストリッツア!一筋縄ではいきません。
監督のエミール・クストリッツア。パトリス・ルコント作品の
「サン・ピエールの未亡人(公開時のタイトルはサン・ピエールの命)」
等では俳優として出演しています。
これだけハチャメチャな内容ながらも、ストーリの破綻等が無いのはスゴイ。
監督の並々ならぬ力量の証拠です。時間を作って彼の過去の監督作品を
観てみようと改めて思いました。
東京での公開は6月12日まで、その後各地で公開されるようですが、ミニシアター系作品です
ので上映劇場はごくわずかです。でも大々的にロードショーされてるどの大作映画にも決して
見劣りなどしません。映画好き、笑いたい、ストレスが溜まってる方等々多くの人に観て
もらいたい大痛快作であると思います。