先日観た映画ディファイアンスの感想です。この映画はユダヤ人狩りに抵抗して自衛コミュニティを作り、
激動の時代を生き抜いたビエルスキ兄弟の実話が題材となっています。
映画の舞台はベラルーシ。旧ソ連から独立した国の一つで、そこへナチスのユダヤ人狩りが
始まったのが話の発端。主人公のトゥヴィアと彼の弟達3人のビエルスキ兄弟は両親を
ユダヤ人狩りで殺されてしまう。長男のトゥヴィアは父の友人コスチェクに色々援助して
もらい、食料や拳銃を受け取る。その拳銃で両親の敵であるベルニッチとその息子2人を殺害。
敵を討ったトゥヴィアは弟達とリピクザンスカの森で隠れ住むことにし、各地のユダヤ人狩り
を逃れた者達が噂を聞いてビエルスキ兄弟達の下へやって来る。そういった新規加入者から
トゥヴィアと次弟のズシュはそれぞれ妻が殺されたことを聞き涙する。
人数が増えると食料が足りなくなる。そのことでいざこざがおき、苦悩きわまった
トゥヴィアは仕方なく馬を殺して食料にするも、その後も食糧問題は続く。
トゥヴィア(左)と次弟のズシュ(右)。ズシュは後に兄と袂を分かつが...
来た者を拒まず受け入れるトゥヴィアに対しズシュは反感を抱き、意見の相違が表面化する。
そんな折にソ連赤軍が現れ、トゥヴィア達はナチスを共通の敵とする提携を結ぶが、
ズシュは戦える者数人を引き連れてソ連軍に加わってしまう。
集団の団結を守るため、反乱分子を射殺するトゥヴィア。
厳しい冬がやってきて、食糧不足はますます深刻になった。トゥヴィアの指導力に疑問を
抱き、命に服さない者も出てくる。そういった不満分子の一人をトゥヴィアは射殺し、
「俺が指導者である限り命令に従え」と毅然と言い放つ。
そんななかある者がチフスにかかり、ソ連軍にペニシリンをもらいにいくも断られてしまう。
その時ソ連軍に参加していたズシュが警察署を襲ってペニシリンを回収するのを手伝ってくれ、
無事ペニシリンを入手することができたもののズシュは怪我をしてしまう。そんなズシュに
トゥヴィアは「戻って来い」と諭すもその場では別れる。
後にトゥヴィアの妻となるリルカ
年が明けて1942年4月、トゥヴィアはゲットーから逃げてきたリルカという女性と深い仲に
なっていた。そんなある日伝令役のドイツ兵を同胞が捕まえ、彼が持っていた伝令所に
より2日後にトゥヴィア達のキャンプが襲撃されることを知る。それを知った同胞達は
積もり積もった恨みを晴らすためにドイツ兵を殴り殺す。
翌日トゥヴィア達のキャンプはドイツ軍の空襲を受け、トゥヴィアは脱出の命令を下す。
ビエルスキ兄弟三男のアザエルは皆が逃げる時間を稼ぐため、数人の仲間と殿役を引き受ける。
兄弟の三男アザエル。親しみやすいキャラだったが、妻ハイアを守りたいという気持ちが彼を
成長させた。
トゥヴィアが先導して森の奥へと進んだが、進路には大きな川が...。ドイツ軍に囲まれている
今進路は川を渡るしかないが、老人や子供を抱えている上に殿役のアザエル達も合流していない。
絶望のあまり呆然とするトゥヴィア。その時アザエルが合流し、兄を叱咤する。
「やればできる。神はモーゼのために紅海を裂いたが、僕らには奇跡はない。奇跡は
自分で起こすしかない!」その言葉に皆立ち上がり、ロープやベルトで皆を繋いで川を
渡ることに成功するものの、対岸にもドイツ軍は進出していた。またも激しい銃撃戦に
なるが、次第に追い詰められていくトゥヴィア達。そこへズシュが現れ...
トゥヴィア達の先生であったハレッツと自称頭脳労働者(新聞記者だったような...)のイザック。
肉体労働は不慣れな彼等も、生きるために変わっていく。この二人のやり取りはこのハードは
内容の映画の一服の清涼剤として機能しています。
というような話です。彼らは生きるためとはいえ農家から作物を奪ったり、
それを恨みに思って彼らのことを密告する農夫を殺したりと罪を重ねなければならなかった。
そうしなければ生きていられなかった。この戦争を行きぬいた後、三男のアザエルは
ソ連軍に入って戦死、トゥヴィアとズシュはアメリカに渡って運送会社を経営した
そうです。本当はそうやって穏やかに暮らしたはずの人が、極限状態のなかで罪を
重ねながら生きていくしかなかった。今後そんなことは起こらないでほしいと
思いつつも世界中ではテロや互いの民族や宗教に端を発する紛争が後を絶たない。
私は趣味としてサバイバルゲームをしますが、ホンモノの銃を持たないですむ
ことが本当に素晴らしいことであるという思いを改めて強くしました。
しかし映画の終盤の最大の見せ場に主人公のトゥヴィアが呆けてて、彼の弟のアザエルが
それを叱咤するというシーンには驚いた。主役のトゥヴィアを演じたダニエル・クレイグは
007のボンド役によって世界的スターであるというのに...。こういう脚本を受け入れる
のだから、プログラムに書かれていた通り彼は本当にいい人なんだろう。素晴らしい事です。