前回の紹介記事で細かいことは気にするな的発言はしましたが、それでも細部にこだわって
しまうのがマニアのマニアたる所以。というわけで、今回は映画“三国志”の突っ込み
所を取り上げます。。
まず、この映画では歴史的事実や地理的条件をかなり無視して描かれています。
・赤壁の戦い前後の劉備軍が天下統一?ありえねー!
平安と趙雲が出会った時、平安は「我々の軍勢が各地を平定すれば戦火も収まる」
といった話をするのですが、この時の劉備は荊州の劉表に間借りしているに過ぎない
客将。天下統一どころか生き残りの方策を探るので手一杯だったはず。
そんな状態で天下統一も何もあったものじゃないんだけど...。
↑北伐時の羅平安。趙雲は彼を兄と慕うのですが...
・無茶な任務に失敗で打ち首?
それに平安が任された劉備の家族の護衛にしても、曹操軍の精鋭に襲われたのだから、
余程の名将でない限り失敗して当たり前の任務。それで平安を責めても意味がない
のに、張飛なんて今にも平安を殺さんばかりに怒り狂ってるし...。
・常山の位置関係が変!
あと平安と趙雲の出会いのシーンで無学な趙雲に対し平安は布にかかれた中国大陸の地図
をあげるというシーンがあるのですが、その地図では彼らの出身地である常山が
大陸南部の広陵の近くになっていました。事実では中国の北部ですから、曹操の支配地に
ある土地。曹操が旗揚げする前から劉備軍にいるのならともかく、そうでない人間が
この時期に劉備の陣営にいることがおかしい。
後の趙雲の里帰りのシーンも、故郷の常山は曹操の支配地=敵地=出入り禁止のはず。
その上あんなに盛大な歓迎パーティーなんてとてもじゃないが出来るはずがない。
更に人形遣いの女性に対して「戦乱はもうすぐ終わるから、そうしたら迎えに来る」
といった話をするのですが、この時の情勢としては曹操は赤壁で大敗を喫し、
劉備は荊州南部に勢力を拡大、呉の孫権は荊州の一部を自領に組み入れるといった具合で、
三国の鼎立状態が見え出した状態。まだまだ曹操の優勢は変わっていません。
それでどうしてすぐ戦乱は終わるなんて言えるんだ?
戦乱が終わってから迎えに来るなんて言ってたら、双方ヨボヨボになっちまうぜい!
↑バリバリの武闘派として描かれていた鄧芝(とうし)。小説や漫画では軍の指揮官としても
いい働きをするものの、陣頭で得物を振り回すというイメージではないんですが....
・そんなに人口いないでしょ!
五虎将軍任命のシーンでも、
・関羽に軍10万を預けて東の守りを任せる
・張飛に軍10万を預ける(任務の内容は何だったけ?)
・馬超に軍5万を預け、北方の守りを任せる
・黄忠に軍5万を預ける(任務の内容は度忘れしました)
・趙雲に軍10万を預けて北伐の将に任命する
といったやりとりがありますが、当時の蜀の人口はいいとこ100万人くらいといわれてて、
絶対的に無理な数字であることは明らか。まあ日本の太平記などでもあり得ない数の
軍勢が書いてありますから、鵜呑みにしてはいけないということですが。
↑別働隊の将関興。なんだか知らないうちに全滅してました
・無為無策すぎる孔明
最初の登場シーンでは見事な情勢判断を見せて見事曹操軍を打ち破るのに貢献した
孔明大先生ですが、北伐の場面では無為無策に過ぎる!。趙雲に秘密の命令書を
渡し、ある地点に至ったらそれを見るようにというのはまだしも、その指示が
軍を2つに分け、趙雲の率いる軍勢が敵の主力を引き付け、もう一軍が北方の
魏領の攻略を行うようにという内容。蜀軍はそのとおりに行動するものの、
北方攻略に向かった別働隊は全滅し、残った趙雲の部隊も...。
孔明は初登場の時「捨て駒が全滅しても、戦いに勝てばいいのだ」的な話を
していたのですが、捨て駒どころか無駄に軍を壊滅させただけの結果にしか
なってない。こんな戦いをしてたんじゃ蜀が滅びるのも当然でしょ!
孔明は関羽と並んで中国でも敬われている人物のはずなのに、よくここまで
無能な人間として描いたもんだ。孔明ファンの抗議の山でもあったんじゃないか?
と疑いたくなります。
↑琵琶みたいな楽器をかき鳴らす曹嬰。創作キャラです。史実の人物だったら
周瑜がお似合いな格好です。
・曹嬰の行動の謎
蜀の別働隊を全滅させ、後は趙雲の部隊を追い込めばいいという状況を作り出した
曹嬰。彼女は曹操の孫娘で、祖父譲りの軍事的才能があるという設定。
あとは時間をかけて蜀軍の兵糧切れをまってから攻撃をかければいいという
状況なのに、自ら陣頭に立って趙雲に戦いを挑みます。この時点で十分変
ですが、結果的に敗北をきっするものの途中まで達人趙雲に対し互角の立ち回りを
演じています。まあ映画だから見せ場が必要なのは分かりますが...。
女の曹嬰が達人趙雲と互角に戦ってたこと自体は、香港のカンフー映画ではよく
ありがちなことらしいのですが...。
他にもあえて言えば的なことはありますが、限がないのでこのあたりで止めて
おきます。あれこれ言いましたが、それも私が三国志を愛好するが故のこと!
誰でも好きなものには饒舌になるものでしょ!この映画自体はよく出来ている
と思うので、興味を持たれた方は是非劇場でご覧になってください。