練習なんてあてにならないって言ったろ?
そう、あの日は午後から強い風が吹き始め、雲行きもなんだか怪し
かった。
「終わったと思ったね」
「あん時の工藤は職人だったね。チャチャってバトンを拾ってさ、一人
抜いてウサに渡した」 (職人って……)
そうだった。ごめんって言いながらのバトンをもらった。
あれは、もう一人抜けなくてごめんの意味だとあとでわかった。
まだうんと幼い工藤の弟が、トラックぎりぎりまで近づいて危ないと
先生に止められながらも叫んでいた。
「おねーちゃーんがんばれー」
その声を聞いたら、じいさんばあさんのように何だか涙なんて出そう
になってあわてた。
自分も叫んだことがある。姉の咲良に。
そしていまだってなお叫んでいる。時々心の中で。
きょうだいのあり方なんてそれぞれでわからないけど、取りあえず
弟なんておねえさんの味方で、ナイトの気分でもあると思う。和風に
いうなら手下だ (和風だとなぜか下っ端扱いになるんだな)
そうだけど (なのに) きっと姉の方からは、自分が弟を守って
あげている、と思われているのがオチなんだろう。