記録:35 | Quiet Record

Quiet Record

~うたとことばのものがたり~ 

わたし (たち) の良心の声は大きく
わたし (たち) の耳はよい

     

 子供の頃


 友達の家の近くに 当時も珍しく大きな檻で飼われているクマのような

犬がいました

 檻は道路に面していたので 犬は人が通る度に立ち上がったり

険しい顔で時には吠えもしたのですが 彼女にはとても馴れていました


 毎日顔を見るし名前で優しく呼ばれ いつしか友達認定していたのでしょう

 

 日常っていうのは圧倒的です


 彼女と一緒だと吠えないし

たぶん彼女の好意で 頭も触らせてくれたと思いますが (はっきり覚えて

いないのは少なからず怖かったのでしょう)

 あれ (失礼) を 「〇〇ちゃん」 と呼べるのはスゴイな と思ったものです


 このような思い出もある 自他共に認める犬が好きな人で 見れば

素通りしないでタッチしたりしていました


 それが一変したのは大人になってからのことです

 単純な話で 本気で噛まれたのです (旅行中の出来事でした)


 白いテリアが 赤い首輪を着けていました

飼い主の姿はなく 迷子になったんだと思ってそそと近寄ってまさに手を

差し伸べたその先の指を!

 

 一瞬だったのと あまりにもびっくりしすぎて立ち尽くしました

飼い犬にも噛まれたことないのに→ 犬って噛めるんだ→ 助けてあげようと

思ったのに→ 余計なお世話だったんだ 悲しい思考でくらっとしました


 今にして思えば よそ者の匂いがしたのでしょう

 ひとりで帰れるから家路を急いでいたのに 見ず知らずの人が急に

邪魔立てしてきて……

 白い赤ずきんにしたら 自分は狼でした


 この一件は 時間が回復させてくれていますが

飼い主と一緒の時には大抵は触ってもいいかと許可をもらうのに ひとり

だからといって自分が傲慢でした

 

 それからは余計なお世話はしません

 目が合ってもあちらから寄って来ない限り 見るだけに留めています






 飼い犬の 親の顔して 舐めたるは

  添いてさし出す 左腕かな