国家戦略特区『医療』(混合診療)の問題点
国家戦略特別区域法が2013年12月7日に成立しました。この法案の趣旨は「経済社会の構造改革を重点的に推進することにより、産業の国際競争力を強化」し、「国際的な経済活動の拠点の形成を促進」する観点から、国が定めた「国家戦力特別区域において、構造改革等の施策を総合的かつ集中的に推進」するために必要な事項を定めることとなっています。
すなわち、国が決めた区域では企業が好き勝手に活動をおこなうことができるようにするために、国は構造改革(規制緩和)を大胆にすすめるというものです。
この法案成立に先立って、日本経済再生本部が2013年10月18日に決定した「国家戦略特区における規制改革事項等の検討方針」に具体的な6項目が掲載されており、その第1項目に『医療』が取り上げられています。その内容は、国内外の優れた医師を集め最高水準の医療を提供できる世界トップクラスの「国際医療拠点」を作り、国内に居住・滞在する外国人が安心して医療を受けられることはもとより、世界中の人たちがそこで治療を受けたいと思うような場所にする、ということです。そのために、外国医師の診察、外国看護師の業務解禁、病床の新設・増床の特例、保険外併用療養の拡充等を検討することとしています。
いっぽう、TPP交渉に関して日本が世界に誇る「国民皆保険」制度の空洞化が心配されています。TPP交渉のアメリカの窓口は米国通商代表部が担っていますが、その米国通商代表部が作成した「外国貿易障壁報告書」は、医療機器の価格調整ルールと医薬品の新薬創出加算の恒久化と加算率の上限という障壁(規制)を撤廃するよう求めています。これらの規制なしに先進医療機器や画期的な新薬が輸入されると、値段は確実に上がり国民医療費は確実に増えてしまいます。その次に米国が要求してくるのは、混合診療の全面解禁と株式会社の病院経営の解禁だろうと言われています。それが、この国家戦略特別区域法で一気にすすめられる危険があります。
「医療特区」で画期的な新薬や先進医療機器で治療が受けられるとなれば、たとえ保険が適用されなくても患者は受診しようとします。そうすると、政府は、財政難を理由に、現在健康保険でみている療養までも「保険外」にする危険性が高まります。そして、混合診療がすすむと、保険外の診療の費用は患者負担となり、お金のある人とない人の間で、不公平が生じます。「保険外」としてとり扱われる診療の内容によっては、貧富の差によって治る病気も治らない(手遅れ)危険性があります。現段階では株式会社の参入が認めらかどうか不明ですが、もし株式会社の参入を許すと、さらに貧富による健康といのち不公平が増大することになります。