裸の休日。 | Q05 quest

裸の休日。

一日中裸で過ごした。

私も、彼も。





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朝起きて、シャワーを浴びた。

私はバスタオルを巻いた恰好のまま出ると、

彼はベッドで本を読んでいた。

私もその横に入って、昨日のつづきの本を読んだ。


―「Fly,Daddy,fly」

もともと彼が持っていた本。

映画化されて、予告編がこの間観たDVDに入っていた。

面白そうだったので、本を読んでみることにした。

そうして、金城一紀ワールドにどっぷりとつかっていった。

私と、それから、

昨日また『ザ・ゾンビーズシリーズ』を買ってきた、私の恋人も。

2人並んで、ベッドで本を読んでいた。




お昼前に「Fly,Daddy,fly」を読み終わって、

「お腹すいた」と、私がうだうだ言っていると、彼がパンを焼いてくれた。

いつもはダブルソフトなのだけれど、

今週は、彼が気まぐれに買った神戸屋の食パン。

耳が甘くてさくさくしていて、とても美味しい。

彼は、自分にコーヒーを、私には紅茶を入れてくれた。

それらは、平日の朝の、私の役割りだ。

こういう、彼の律儀な気遣いが、私たちの円満を支えてくれている。



そう思いながらパンを齧っていると、

彼はにやっとしながら、マーガリンの箱を指差した。

蓋が、開けっ放しになっていた。

「いっつもマーガリンの蓋開けっ放しだよ。」と、

ついこの間、私は彼に小言を言ったばかりだった。

「…あら。」と、私は笑ってごまかしたけれど、

彼は、勝ち誇ったような嬉しそうな顔をしていた。

愛しい愛しい、8歳年上の私の恋人。




それから私は、「SPEED」を読み始めた。

『ザ・ゾンビーズシリーズ』第三弾。

彼は、昨日営業中に本屋に寄って買ったらしい、

「レヴォリューションNo.3」を読んでいた。

本当はこれが第一弾なのだけど、私も彼も、

第二弾「Fly,Daddy,fly」

第三弾「SPEED」

第一弾「レヴォリューションNo.3」

と、スターウォーズ形式で読んでいった。




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夕方、彼はインスタントラーメンを作ってくれた。

「非常食」と言って、私が買っておいた、

サッポロ一番塩ラーメン。

インスタントラーメンの中で、

私はこれが一番美味しいと思う。




私が「SPEED」を読み終えたのは、午後の3時過ぎだった。

さっきまでページをめくっていたはずの彼は、

隣で、静かな鼾をかいていた。




「読み終わったよ?」と言ってキスをしてみても、

なんの反応もなかったので、

私は、少し迷ってから、

彼が読み終わったらしい、

「レヴォリューションNo.3」を手に取った。





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全部読み終わった頃には、外はすっかり日が暮れていた。

金城一紀はページが軽くて、温度がある。

普段は、時間が止まってしまいそうな、

微熱ほどの変化を味わうような本が好きなのだけど、

『ザ・ゾンビーズシリーズ』は、すごく良かった。



「山下」は、あれに似ている。

ノルウェーの森の中の、生真面目な学生。

なんていう仇名だったか、思い出せないけれど。

毎朝ラジオ体操をする、主人公と同じ部屋の男の子。

蛍をくれた…ああ、本当に思い出せない。


つまりは、世界に平和をもたらす、偉大な人たち。





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今日は、一日中、本を読んだだけ。

ご飯は全部、出来うる限りの努力で、

彼が食べさせてくれた。

私は一日中、ベッドでうだうだとしながら、

本を読み続けた。裸で。






明日起きたら、掃除をしよう。

食器を洗って、フローリングを磨こう。

と、こころに決めて。

パジャマを着てから、私は寝ます。

彼はもう寝ています。






グンナイ。