凪 | Q05 quest

人生に、殊更なことを望まなくなった。



勝ち負けを求めることは悲しくなるし、

世界を広げようと思えば苦しくなる。



本当は、ただ諦めただけなのかもしれないけれど。




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仕事は楽しい。

今は難しいことは出来ないし、求められることも多くない。

毎日、少しずつ、色々覚えていくのは、気持ちが良い。




早めに帰るようにしている。

本当はもっと、

頑張らないといけない立場かもしれない。




恋人との時間。

それもある。

それもあるけど。





まだ怖い。





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きちんと食事をして。

きちんと睡眠をとって。

運動不足なら歩いて帰る。

牛乳を飲む。

時々肉も食べる。






ぽんこつな自分を労わること。

優しくしないと私が壊れる。





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どっちが前だかわからなくなる。

上手に息が出来なくなる。

馬鹿げて大袈裟なサイレンの音。

圧し掛かる自己嫌悪。

ひとりで見上げた病院の天井。






朝が、怖かった。

凶暴で見えない鈍器を、

頭の中で飼ってるみたいだった。



もう、あんな風にはなりたくない。

絶対に。

絶対に。







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恋人と、健やかに、笑っていたい。

それだけでいい。




いつかの私は、

自分で持て余すほどの上昇志向だった。

崇高な向上心があった。

競争心も。自己顕示欲も。

集中力と、忍耐力も。

それから、情熱も。





もしかしたら、

ラケットと一緒に、

すっぽりとテニスコートに置いてきてしまったのかもしれないし、

あるいは、

上を見ることを忘れた日々に、

少しずつ少しずつ、溶けていってしまったのかもしれない。

そんなことではなく、

ただ単純に、

カラダが疲れてしまったのかもしれない。





気力なのか、体力なのか。

その両方か。

成長なのか、衰退なのか、

ただ逃げているだけなのか。

わからない。


わからないけれど、

私は変わってしまった。

大きな波がうねっていたはずの水面が、

しんと静まり返るみたいに。

心が平穏を望んでいる。







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今の私を支えているのは、「幸せ」だという事実だけ。



それだけだけど、

でもそれが全てなのではないかと、思う。

ぽんこつで、小さな私が感じられるもの。

それだけあればいい。







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まず、健やかであること。

健全な精神が宿ることの出来る、

健全なカラダを守ること。

朝、好きな人に「おはよう」って笑えること。