きれいな部屋でセックスをしよう。
「する?」
と訊かれると、私はだいたいこう答える。
「暗くなったらね。」
カーテンが半分しかない私たちの部屋は、
日中はひどく明るい。
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部屋の掃除をした。
だらだらと、喋りながら。
ただ何となく片付けていただけだったのに、
いつの間にか、ふたりとも無言になっていた。
彼は洗濯物を干し、掃除機をかけ、
シェルフにたまった埃を拭いた。
私は洗い物をして、冷蔵庫の中を拭いて、
それからお風呂の排水口を洗った。
私が二度目の洗濯物を干している時、
彼は洗面台を磨いていた。
私のダンボールが、部屋の片隅、
というにはわりと多くのスペースを占領してはいるけれど、
陽の射した私たちの1LDKの部屋は、ずいぶんと綺麗になった。
それから、
壊れたDVDプレイヤーを修理に出しに電気屋さんに行って、
その後、スーパーへ行った。
彼は少しずつ、スーパーで買い物をする時に、
不機嫌にならなくなった気がする。
前は、ビールの6缶セットをかごに入れるや否や、
「早く帰ろうよ。」と私を急かしていたけれど、
少し、私のペースに合わせてくれるようになった。
「もち買っていい?俺の非常食。」と、
切り餅を嬉しそうにかごに入れていた。
あとから見たら、ちゃっかり海苔まで買っていた。
それから、レンタルビデオ屋さんに行って、
Interpreterを借りて、
ミニストップでソフトクリームを買った。
これはいつものお決まり。
私はバニラ。
彼は日によって。今日はミックス。
ミニストップのソフトクリームは、
本当とは思えないくらい美味しい。
帰ったときに部屋が綺麗というのは素晴らしい。
満ち足りた気持ちになる。
大事で大事で仕方がない、と思ってしまう。
私の日常。
この人といる私の日常は、
奇跡という瞬間の、堆積だと。
馬鹿馬鹿しくも本気で思ってしまう。
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お風呂にお湯をはった。
入れると黄緑色になる入浴剤を入れて、二人で入る。
私は一人で入っている時と同じように、唄う。
彼の、せかせかと体を洗うさまを眺めながら。
いつも、彼が先に出る。
私が、入る時に恥ずかしくて消してしまう電気を、
先に出ると、彼が点けてくれる。
私は、丁寧に丁寧に体を洗う。