夢の中の昔の恋。
「今何時。」と、彼に訊いたら、
「2時。」と嘘を言われた。
本当は朝の9時だった。
先週、午後まで寝倒してしまったこともあって、
わたしはびっくりしてとび起きた。
彼は満足げに笑っていた。
せっかくなのでシャワーを浴びて、
小一時間ほど、お風呂場で唄った。
SPEEDの歌。
my graduation。
本当に久しぶりに唄ったこの曲には、
懐かしい恋の記憶がくっついてくる。
中学を卒業する時に流行っていて。
私は、テニスをするために、
大好きだった男の子と離れて、
県外の寮に入ることに決まっていた。
大好きだった、やまちゃん。
結局、別れたのは大学に入ってからだったけれど。
夢を見た。
やまちゃんの夢。
夢の中の私は、まだやまちゃんに恋をしていて。
それから亦木くんが、
ユニバーサルスタジオジャパンのことを、
「UFJ」と言い間違えて、顔を真っ赤にしていた。
あゆみも、ゆきえもいた。
懐かしい顔がごちゃごちゃに混ざった夢。
恋人の隣で、
私は昔の男に恋をしていた。
ちょっとリアルだったから、
起きた時に少しだけ後ろめたかった。
::
シャワーを浴びながら、
ひとしきり思い出を唄って。
髪も乾かさずに、
まだベッドにいた恋人の横に入って、
また眠ってしまった私。
これだから休日は好き。
懐かしい。
懐かしい。
もう、懐かしいとしか思わない。
思えない、昔の恋愛。
恋人の腕枕。
左手を曲げて、私の頭を撫でる手。
体をよじって、両手で抱きしめた。
彼の細い体は、私と抱き合うのに調度良い。
ぴったりと体をくっつけて、彼の首にキスをした。
「気持良いね。」と言うと、
彼はまた、満足げに笑っていた。
この幸せが、ずっとずっと続くといいな。