HERO
「テキストの一番後ろについてる解答集みたいだね。」と、
いつだったか、私は恋人に言った。
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時折、私の思考はぐるぐるまわる。
答えをつかみそうでつかめなくて、
自分の動線に足が絡まる。
思考の断片をつなぎ合わせるみたいに、手探りに話す。
彼は、少し眠そうな(真剣になるとそう見える)顔で、
私が答えを求めるまで、黙っていて。
私が疑問符を投げかけてから、たっぷり3秒。
たぶん、いつも3秒だと思う。
彼の、こたえのリズム。
この間、私は無条件に彼を信じて言葉を待つのだけど。
ほとんど、私の言葉を繰り返しているだけなのに、
私は、頭蓋骨の重力を取り戻す。
ひどく、子供じみた気持ち。
虫食い算を解く、小学生みたいに。
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奇跡だと、思う。
私の疑問符をきちんと汲み取ることとか。
ひねた私の耳に、まっすぐに届くこたえとか。
それは絶望的な幸せで。
泣きたくなる。