秋分
ホームの向こう側には、沢山の電機メーカーの名前が光っている。
見慣れてしまった駅前のモニュメントと、
見知らぬ人生を歩んでいる沢山の知らない人たち。
「大名古屋ビルヂング」という青い文字。
(ビルディング、ではなくビルヂング、と書かれたことにはじめはすごく違和感があった。)
もう、何度私はここに立ったのだろう。
21:00ちょうど発の新幹線を待ちながら私は思った。
いつものように、ipod miniで音楽を聴きながら(今日はwyolica)、
背筋が自然に伸びていることを意識してみる。
今度ここに立つのはきっと、この街を出るときだ。
さかのぼって、日記を書こうとも考えたけれど、面倒くさくてやめた。
仕事を辞める、と決めてから、2ヶ月が経とうとしている。
あの時私は、暗くて汚い渦巻きの中心に居た。
何故ってそれはその渦を作ったのは私自身だったからなのだけど。
波がおさまるのを、ぐるぐるまわりながら待つような2ヶ月間だった。
今は、とても静かだ。
目の前に広がる水面は果てしなくて、
今度はそれに、少し恐怖をおぼえる。
結局、いつだって私は怯えている。
最近、生きることが少しむつかしい。
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引越しの用意をしなければ。
と、思いつつ、引越し予定日を一週間先にむかえている。何もしないまま。
半年間の一人暮らしで、そうそう荷物なんて増えていないと高を括っていたけれど、
いざ日数をかぞえるとぞっとする。引越しの用意をしなければ。
いらないものが沢山ある。
二つの生活がひとつになる時、
二つあったものがひとつしかいらなくなるのだと、
そんな当たり前のことをしみじみと感じる。
洗濯機。
冷蔵庫。
電子レンジ。
食器とか調理器具とか。
昔の恋人にもらったプレステ2とか。
つぎの家には不似合いな家具も。
私の人生から、不要になったものたち。
かつてそれらは、私にとってとても重要で、
愛すべきものだったのかもしれないのに。
いらないものが沢山。
捨ててしまおう。
ごっそりと。
いらないものが意味を持って、
目の前をふさいでしまう前に。