うらがえして、屑を落とす。
涙が、やっぱり止まらない。
病院のベッドよりは、いくらか寝心地の良い自分のベッド。
「もう、辞めたい。」
彼に言った時、私はいろんなことを放棄していた。
愛されるように努力すること。
自分を好きでいようとすること。
前を向いて進むこと。
できる努力を放棄して、
逃げることを選んだ。
これは敗北だ、と思った。
それから怖れた。
彼の言葉を。
「辞めても、いいんじゃない。」と、
彼は受話器越しに、少し笑っていた。
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彼は静かに、言葉を選びながら、話した。
「強いとか、弱いとかじゃないんだよ。」
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天を、仰ぐみたいに。
出逢いに、感謝した。
それは、
私への信頼と、理解。
それから、奇跡みたいな、愛情。
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「ふたりでひとつの人生だから。」
塞ぎきった瞼の裏のうす闇の中で聞いた言葉を、
私は、生涯忘れないと思う。