うらがえして、屑を落とす。 | Q05 quest

うらがえして、屑を落とす。

涙が、やっぱり止まらない。

病院のベッドよりは、いくらか寝心地の良い自分のベッド。



「もう、辞めたい。」



彼に言った時、私はいろんなことを放棄していた。

愛されるように努力すること。

自分を好きでいようとすること。

前を向いて進むこと。



できる努力を放棄して、

逃げることを選んだ。

これは敗北だ、と思った。



それから怖れた。

彼の言葉を。



「辞めても、いいんじゃない。」と、

彼は受話器越しに、少し笑っていた。




::




彼は静かに、言葉を選びながら、話した。



「強いとか、弱いとかじゃないんだよ。」




::




天を、仰ぐみたいに。

出逢いに、感謝した。




それは、

私への信頼と、理解。

それから、奇跡みたいな、愛情。






::











「ふたりでひとつの人生だから。」







塞ぎきった瞼の裏のうす闇の中で聞いた言葉を、

私は、生涯忘れないと思う。