SIREN
「ちゃんと呼吸を調整して。」
と、誰だかわからないおじさんの声がした。
サイレンの音と、それから、赤い色。
痛みに近い痺れで、手を動かすことさえ出来なかった。
とんかちで、叩かれてるみたいに頭が痛んだ。
体とは裏腹に心の中はしんと静まりかえっていて、
初めて乗る救急車に感心したりした。
カカンキショウコウグン。
と、救急隊員のおじさんが病院の人(たぶん)に言っていた。
過換気症候群。
て、あたし、過去吸になったんだ。
最悪。
最悪。
過呼吸って、心の弱い人がなる、あれでしょ。
あたし最悪。恰好悪い。
急患用のベッドは、硬くてせまくて、余計悲しくなった。
ばかみたい。
どうして。
どうしてこんなふうになるんだろう。
どうしてもっと強くなれないんだろう。
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夜、泣きすぎて腫れきった瞼が重い。
誰か、来るのかな。
会社で、なんて言われてるかな。
それにしても頭が痛い。
恋人には、知られたくなかった。
私は、どこまでも脆く弱くなっていくもの。
あなたが恋をした私は、
こんな風じゃなかったかもしれない。
それでも私は私で。
やっぱり強くはなれなくて。
とてもずるくて、醜い。
ごめんね。
ごめんね。
頑張れなかったよ、私。