SIREN | Q05 quest

SIREN

「ちゃんと呼吸を調整して。」

と、誰だかわからないおじさんの声がした。

サイレンの音と、それから、赤い色。


痛みに近い痺れで、手を動かすことさえ出来なかった。

とんかちで、叩かれてるみたいに頭が痛んだ。



体とは裏腹に心の中はしんと静まりかえっていて、

初めて乗る救急車に感心したりした。



カカンキショウコウグン。

と、救急隊員のおじさんが病院の人(たぶん)に言っていた。


過換気症候群。


て、あたし、過去吸になったんだ。

最悪。

最悪。



過呼吸って、心の弱い人がなる、あれでしょ。

あたし最悪。恰好悪い。





急患用のベッドは、硬くてせまくて、余計悲しくなった。

ばかみたい。

どうして。

どうしてこんなふうになるんだろう。

どうしてもっと強くなれないんだろう。




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夜、泣きすぎて腫れきった瞼が重い。

誰か、来るのかな。

会社で、なんて言われてるかな。

それにしても頭が痛い。




恋人には、知られたくなかった。

私は、どこまでも脆く弱くなっていくもの。



あなたが恋をした私は、

こんな風じゃなかったかもしれない。

それでも私は私で。

やっぱり強くはなれなくて。

とてもずるくて、醜い。





ごめんね。

ごめんね。

頑張れなかったよ、私。