カラダ | Q05 quest

カラダ

急患扱いの私を診てくれたお医者さんは、恋人と同じ名前だった。


若くて、眉毛が濃くて真ん中がつながりそうだった。

静かに話す人で、ゆっくりと、いろんなことを訊かれた。


どんな仕事してるの?

いつから痛いの?

どんな時?

仕事はたいへん?

お休みはとれてるの?

便秘は?

生理ちゃんと来てる?


私は、ひとつひとつ、丁寧にこたえた。


ストレスは?


と、訊かれたときだけ、困った。


「ストレス」という言葉がひどく嫌いで。

使うことを躊躇ってしまう。

口にすると、逃げてるような、甘えてるような、罪悪感。


ストレス・・・。

と、口ごもった私に、お医者さんは

「仕事は余裕ある?」と、訊きなおしてくれた。


全然、ないです。と、私は悲しくなりながら答えた。

コトバから逃げても、意味がないのに。



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高校の頃から、一種の発作みたいに繰り返す、嘔吐と頭痛。

社会人になって、3回目。

そのたびに休むわけにはいかないから、観念して、病院に行った。


血の検査。

尿の検査。

MRIの検査。


なんでもいいから、治して欲しい。



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夜更かしとか、

インスタントヌードルとか、

エアコンが好きとか、

不規則な食生活とか。



変えないと、治らないかな。

やっぱり。



もう、いやなんだけど。

一人で便座に突っ伏すのも、

こぼれ落ちる涙も、鼻水も。





変えれば、治るのかな。

ほんとに。