カラダ
急患扱いの私を診てくれたお医者さんは、恋人と同じ名前だった。
若くて、眉毛が濃くて真ん中がつながりそうだった。
静かに話す人で、ゆっくりと、いろんなことを訊かれた。
どんな仕事してるの?
いつから痛いの?
どんな時?
仕事はたいへん?
お休みはとれてるの?
便秘は?
生理ちゃんと来てる?
私は、ひとつひとつ、丁寧にこたえた。
ストレスは?
と、訊かれたときだけ、困った。
「ストレス」という言葉がひどく嫌いで。
使うことを躊躇ってしまう。
口にすると、逃げてるような、甘えてるような、罪悪感。
ストレス・・・。
と、口ごもった私に、お医者さんは
「仕事は余裕ある?」と、訊きなおしてくれた。
全然、ないです。と、私は悲しくなりながら答えた。
コトバから逃げても、意味がないのに。
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高校の頃から、一種の発作みたいに繰り返す、嘔吐と頭痛。
社会人になって、3回目。
そのたびに休むわけにはいかないから、観念して、病院に行った。
血の検査。
尿の検査。
MRIの検査。
なんでもいいから、治して欲しい。
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夜更かしとか、
インスタントヌードルとか、
エアコンが好きとか、
不規則な食生活とか。
変えないと、治らないかな。
やっぱり。
もう、いやなんだけど。
一人で便座に突っ伏すのも、
こぼれ落ちる涙も、鼻水も。
変えれば、治るのかな。
ほんとに。