ACTUS
休日出勤のはずの彼が、昼に突然帰ってきた。
その時私は、クリーニング屋さんがシャツを届けに来たので、
下のエントランスを解錠したところだった。
だから、突然部屋の鍵がガシャ、と音を立てた時は、ひどく驚いた。
クリーニング屋が鍵を持っているはずはない、よね?と自分に問うたほどに。
ドアが開くと、そこには玄関で待ち構えた私に驚く恋人と、
その後ろに、所在無さげなクリーニングのお兄さんが居た。
私がクリーニングされたシャツを引き取って部屋に戻ると、
彼はスーツのまま、メジャーを持ってソファの長さを測っていた。
「ぴったりだなー…。」と、やけに感慨深げで、嬉しそうで。興奮気味。
それにしても、脚長いなこの人。と、
脚を大きく広げてメジャーを使う男を見て、そんなことを思いながら、
「どうしたの?」と、彼の期待に副うように質問してみた。
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要は、ずっと欲しかったACTUSのローテーブルが、
セールで安くなっていて、とても嬉しくて、
大きさが部屋に合うかを測りに来たらしく。
そうしたら、テーブルとソファの横の長さがぴったりで、
私のかわいい恋人は、そのテーブルに運命を感じてしまったようで。
「今日一緒に買いに行こう。」と、彼は本当にはしゃいでいて、
生理でテンションが上がらない私も、引きずられて少し楽しくなった。
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彼がアポイントをすませて帰ってくると、
もうお店が閉まるぎりぎりの時間で、二人とも大急ぎで着替えて出かけた。
ACTUSに着くと、ちょうど「CLOSE」のボードを入り口に出すところだったけれど、
昼に彼を担当してくれたお姉さんが、快く迎えてくれた。
恋人とお姉さんは、まっすぐにお目当てのテーブルのところまで私を案内してくれた。
それは長方形の、私の膝よりも少し低いくらいのテーブルで、
彼の部屋のホームシアターセットのスピーカーの色とよく似ていた。
赤みがかった、濃い茶色。素敵だと思ったので、「いいじゃん。」と素直に言うと、
「じゃあ、これ買います。」と、ほとんど間をおかずに彼が言った。
いつから私が決裁権者になったんだと苦笑しながら、
それでもやっぱり、一緒に生活をしている感覚がくすぐったくて、嬉しかった。
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お会計を待ちながら、「あとはブラインドだな。」と話した。
彼の部屋は窓が規格外に大きくて、それは喜ぶべきことなのだけれど。
今は、前の部屋のカーテンが、半分だけ寸足らずにかかっている変な状態で。
本当は、壁面シェルフとかテーブルとかよりも、優先順位が高いはずなのだけれど。
「もうブラインドじゃなくてもいいかー。」と彼が言うので、私も考えてみた。
確かに、規格外のブラインドをオーダーすると、やたら値がはる上に、流用できないし。
「結婚して違う家に住んだら…」と、私が思うままを口にすると、
「使えんよなぁ。やっぱりカーテンでいいな。」と、彼が続けた。
本当はこの時、私はすごく嬉しかった。
2年以内には結婚する、という認識を共有出来て、
それを当たり前のこととして話していて。
幸福さに、密かに、少しどきどきした。
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帰り際、ACTUSのお姉さんがこっそり教えてくれた。
「実は私も内緒で社内恋愛してるんです。気持ちすごくわかります。」と。
お姉さんのはにかんだような笑顔はとてもキレイで、嬉しくなった。
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お気に入りのテーブルを買って、
プライベートな話まで聞いてもらって、
おまけに共感してくれて。
お店を出るときにはとてもいい気分で、
ACTUSのサービスレベルってすごく高いな、なんて。
最終的な感想が、いまいち可愛くない私。
ともかく、今日は素敵な休日だった。