脚が痛い | Q05 quest

脚が痛い

試合に勝ち続けると、

自分が負けるときのイメージを忘れてしまう。


攻めきれないことへの自己嫌悪とか、

じわじわと迫りくる「負けの予感」への恐怖とか。



それと、おんなじ気持ち。



知ってるつもりだった。

自分が弱い人間だと言うこと。

向き合ってるつもりだった。


目標が見えれば、迷うことなく、走れると。

その道が厳しかろうと。

そう、思っていた。

「モラトリアム」という時代。



*******



誰か、背中を押して。

私の前に転がる砂利をよけて。

手をつないで、引っ張って。


果てしない、戯言を思い浮かべる。



だって、


忘れていたもの。


こんなに、


弱くて、ずるい人間だったこと。





いつだって走れると、勘違いしていたの。


脚が痛いの。

脚が痛いの。

ねぇ誰か聞いて。







嘘。いまの嘘。





嘘だから。






もうちょっと、待って。

もうちょっと、踏ん張ってみるから。


靴の紐を、結びなおす時間だけ、待って。