脚が痛い
試合に勝ち続けると、
自分が負けるときのイメージを忘れてしまう。
攻めきれないことへの自己嫌悪とか、
じわじわと迫りくる「負けの予感」への恐怖とか。
それと、おんなじ気持ち。
知ってるつもりだった。
自分が弱い人間だと言うこと。
向き合ってるつもりだった。
目標が見えれば、迷うことなく、走れると。
その道が厳しかろうと。
そう、思っていた。
「モラトリアム」という時代。
*******
誰か、背中を押して。
私の前に転がる砂利をよけて。
手をつないで、引っ張って。
果てしない、戯言を思い浮かべる。
だって、
忘れていたもの。
こんなに、
弱くて、ずるい人間だったこと。
いつだって走れると、勘違いしていたの。
脚が痛いの。
脚が痛いの。
ねぇ誰か聞いて。
嘘。いまの嘘。
嘘だから。
もうちょっと、待って。
もうちょっと、踏ん張ってみるから。
靴の紐を、結びなおす時間だけ、待って。